★猫丸しりいず第122回

●猫丸しりいず第122回
 
◎ヴォルフ=フェラーリ:歌劇「スザンナの秘密」序曲、組曲「聖母の宝石」他
 
 ネロ・サンティ指揮 パリ音楽院管弦楽団
(国内DECCA UCCD9071/廃盤)

 
9a8e12e5.jpeg
特定の1曲だけが突出して有名になってしまう事は、作曲家にとっては「災難」としか言いようが無い。
 
他に如何に優れた作品があっても顧み得られる事すらなく、「ああ、あの○○を書いた人ね」で片付けられてしまう。これは作曲家にとってはタマラナイであろう。「聖母の宝石」の第1幕間奏曲のみがやたら有名なエルマンノ・ヴォルフ=フェラーリ(1876~1948)はそういう意味では最も可哀そうな人の一人だ。
 
私がこの作曲家に関して認識を改めるキッカケとなったのは、ネーメ・ヤルヴィ指揮の「オペラ間奏曲集」(DG)に入っていた「聖母の宝石」の「第3幕への前奏曲」。「へえ、あの有名な間奏曲とは別の曲か」という興味本位で聴き始めたが、「すばしっこくて捕まえられないカワイイおてんば娘」のようなその間奏曲が一発で気に入ってしまい、俄然この人の他の作品にも関心が湧いてきた。
 
実際に聴いて感じたのは、彼の本領は有名な「聖母の宝石間奏曲」のような「連綿と美しい旋律が流れるユッタリした曲」よりもむしろ、「キビキビした快活な曲」にあったのではないか・・という事。今回ご紹介のサンティ盤の最初に収録されている「スザンナの秘密序曲」や「聖母の宝石組曲」の「民衆の祭り」はそのわかりやすいサンプルと思える。実は彼はコミック・オペラの領域に多くの作品を遺した人だそうで、軽快な曲に本領発揮というのは、むしろ当然の事なのかもしれない。ところが有名な「聖母の宝石」は、彼にはむしろ珍しいヴェリズモの影響を受けた悲劇、というのは何とも皮肉。
 
彼は、その名前からも察しがつくようにドイツ人の父と、イタリア人の母の間に生まれた(それゆえ、父母の国が敵味方に分かれて戦った第1次世界大戦には大変なショックを受け、しばらくは創作の筆が止まってしまう程であったと言う)。オペラのみならず、一部マニアには大きな支持を得ている「ヴァイオリン協奏曲」など、他のジャンルにも優れた作品を遺しているにも関わらず「聖母の宝石間奏曲の人」で処理されてしまっているのは残念でならない。
 
今回ご紹介のサンティ盤は1959年の録音。私もNHK響への客演で何度かステージに接し、大きな感銘を受けたこの名指揮者。商業録音には全く関心が無いようで、これ程の名匠なのに入手可能な音盤が非常に限られているのは残念。この盤は彼のキャリア最初期の録音で、さすがに現在のような充実感には欠けるが、キビキビした指揮とオケの明るい音色が作品の魅力を過不足無く引き出している。ヴォルフ=フェラーリの管弦楽曲集は他にもレーグナーやマリナーの盤があるが、いずれも優れた内容なのは嬉しい。
 
 特定の1曲だけが有名になってしまったばかりに・・・という作曲家は他にも少なくない。今後も折あればこの「猫丸」でネタにしていきたいと思う。最後にヴォルフ=フェラーリになり代わって一言。『オラは「マドンナ」の一発屋じゃねえだよ!!』

discunion新宿classic 猫丸ひろし

Entrance







Classical Broadcasting for YouTube



Topics





About


 

diskunion Link








 

















Calendar

07 2017/08 09
S M T W T F S
1
12
13 15
20 21 23 24 25 26
27 28 29 30 31

Search

カウンター

Copyright © diskunion Shinjuku Classic-Kan All Rights Reserved