★猫丸しりいず第124回

   
   
   
●猫丸しりいず第124回
 
◎グリンカ:幻想的ワルツ、ホタ・アラゴネーザ、「ルスランとリュドミラ」組曲 他
 
ヴァシリー・シナイスキー指揮 BBCフィルハーモニック
(英CHANDOS CHAN9861)
私もそうだけど、「ロシア音楽の無いクラシック音楽なんて・・」とお思いのロシア楽曲好きのリスナーの方は結構多いのでは無いだろうか。
 
考えてみると、西洋クラシック音楽における「ロシア音楽」の位置は結構特殊だ。他のヨーロッパの地域ではそれぞれ16世紀位からの「音楽史の流れ」があるのに対し、ロシアのそれは音楽史の中に「いきなり登場」という感じなのだ。それはロシアにとって「西洋クラシック音楽」が「輸入品」だった事と関連しているのだろうが、「バロック」も「古典派」もなく、ある作曲家の登場で突然スタートというのはなかなか凄い話だ。その作曲家、ミハイル・グリンカ(1804~1857)が今回のテーマ。
 
彼は、ベルリオーズ、メンデルスゾーン、ショパン等とほぼ同世代。輸入されたヨーロッパの音楽に、うまくロシアの味をまぶした優れた作品を遺し、後輩たちに道を切り開いた超大物にもかかわらず、「ルスランとリュドミラ序曲」以外の作品がほとんど知られていないのが実態である。しかし、前々回にとりあげたヴォルフ=フェラーリに比べれば、グリンカはまだ幸運だろう。なぜなら、この名序曲はグリンカの音楽の魅力のエッセンスを凝縮したと言える大傑作だからだ。
 
凛々しささえ感ずるその造形美、無駄の無い構成、キッチリ片付けられた部屋を見るような見通しの良い響き。しかも聴いて楽しく、ロシアの香りもキチンと感じられる。とにかく完成度が高い。この序曲には確かにドイツをはじめとするヨーロッパの影響が強く感じられ(何となく「魔弾の射手」序曲に通じるノリがある)るし、それに飽き足らない後輩の作曲家たちが、「よりロシア的なモノ」を目指した事は理解は出来る。しかし、グリンカの作品をまとめて聴いてみると、彼の作品にはパイオニアにありがちな「暗中模索」「荒削り」的な要素がほとんど感じられず、既に相当な高レベルに到達していると思えるのだ。「先駆者」でありながら、グラズノフやチャイコフスキー等々の後輩たちに全く引けを取
らない高レベルの仕事を既に成し遂げているのは大変な事なのに、あまりにグリンカは過小評価されているように感じられるのは残念だ。
 
彼の作品集には当然ロシアの演奏家による優れた音源もあるのだが、演奏、録音等全てのレベルでピカイチのおススメ盤がシャンドスのシナイスキー盤。このレーベルから他にも優れた録音を発表しているシナイスキー、ことさらロシア色を強調しないニュートラルなアプローチが、かえってグリンカの音楽の持ち味を上手く引き出している。2つの「スペイン風序曲」や「幻想的ワルツ」など、「ルスランとリュドミラ序曲」に比肩しうる名作と思うが・・・
 
グリンカ以前の年代でも、西洋クラシック音楽の系譜にのせてよい作曲家が全く存在しなかったという訳ではない(アリャビエフとか・・)。でももし、この時代にグリンカという作曲家が存在しなかったら、その後のロシア音楽の歴史は少なからず変わっていたのではないだろうか。もっと評価されて良い彼の作品と業績。ロシア音楽を愛する貴殿。一度じっくり聴いてみませんか? 彼の「隠れ名作群」を・・・

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