★猫丸しりいず第128回

●猫丸しりいず第128回
 
◎バルトーク:交響詩「コシュート」、管弦楽のための協奏曲
 
イヴァン・フィッシャー指揮 ブダペスト祝祭管弦楽団
(蘭PHILIPS 4767255)
 
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今思うに、私が最初に接した「ゲンダイオンガク」はバルトークだった気がする。
 
バルトークの音楽は21世紀の今日では最早立派な古典であって、今や「現代」音楽という位置付けはされないだろうが、30年以上前はまだ新ウィーン楽派と同格位には「現代音楽」っぽい捉えられ方をされていたように思う。それは当時バルトークがまさに「コンテンポラリー」な作曲家だった時代から活躍していた作曲家や演奏家がまだまだ現役バリバリだった事も関連していたのだろう。
 
実際私もクラシック聴き始めの高校生の頃、作曲家の柴田南雄氏の著作に多く接したからか早くからバルトークの作品に興味を持った(柴田さんのバルトーク論やマーラー論は今読んでも本当に面白い)のだが、まず聴いた作品が「弦・打・チェレスタ」「ピアノ協奏曲第1番、第2番(当時ポリーニ&アバドの新録音が大変な話題となっていた)」「弦楽四重奏曲」等々の作品。まさに「硬派バルトーク」と言えるハードボイルドな作品ばかりで、「凄い作品だけど、気軽に楽しめるって感じの曲じゃないな」というのがバルトークに対する第一印象だった。
 
だから、その後「管弦楽のための協奏曲」を初めて聴いた時には、「エッ!?この人がこんな華麗で聴きやすい曲を書いていたのか?」と本当に驚いた。聴いた盤がまさに華麗な演奏のカラヤン盤(EMI)だった事もその印象を強くしたと思う。この名作が生まれた背景を後で知った私が非常に複雑な感慨を覚えた事も非常に記憶に残っている。
 
有名な話だが、この曲はアメリカに移住後すっかり創作意欲を喪失し、経済的にも困窮に陥っていたバルトークに何とか救いの手を差し伸べようと同郷のライナー、シゲティらが当時のボストン響の音楽監督クーセヴィツキーに働きかけた結果生まれた、クーセヴィツキー財団からの委嘱作である。当時鬱状態にまで陥っていたバルトークがわずか2か月で、こんな傑作を書き上げたのはまさに驚異。カラフルで親しみやすい曲ながら、第3楽章の胸が締め付けられるような嘆き節には当時のバルトークの心情が吐露されているようで、誠に感慨深い。
 
もう1曲「驚愕」モノのバルトーク作品が「コシュート」。この曲を何の予備知識も無しに聴いて作曲者を当てられる人が一体何人いるだろうか。このフィッシャー盤は「コシュート」が最後に収められているが、もしこれがアルバムの最初に入っていたら、「アレ?盤を間違えたか?」と仰天する人も多いのでは。ハンガリーの革命家コシュートを題材としたこの作品、一言で言って「なんちゃってリヒャルト・シュトラウス」という趣きで、バルトークの作品らしいストイックな感じがカケラも無いのには思わず笑ってしまうほど(シュトラウスの「マクベス」あたりに非常に近いノリの作品である)。
 
それもその筈で、この曲は彼がまだ21歳の時にシュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」に大きな衝撃を受けて、その影響下で生まれた作品との事。彼がコダーイと出会ってハンガリー各地の民俗音楽の収集を始め、自己のスタイルの確立をスタートさせるのは、この約5年後の事であり、この「コシュート」はバルトークのほんの駆け出しの頃の作品という訳であった。今でこそ「この人も若い頃はこんな曲書いてたんだねえ」という存在の「コシュート」。しかし、事の運びによってはバルトークはこの「コシュート路線」のまま、「R・シュトラウスの亜流のB級作曲家」で終わっていたかもしれない・・・と考えると、人の一生ってホントにわからないな、と思ってしまう。
 
今回ご紹介の盤のフィッシャー&ブダペスト祝祭管は、その高レベルの仕事ぶりに比べ、日本ではイマイチ人気が無いように思われる。ハンガリーの指揮者、オケによるバルトークと言えば、地元フンガロトンによる鄙びた演奏が頭に浮かぶ。あれはあれで捨て難い味わいがあったのだが、国際的水準のオケで「本場物」の演奏が聴けるようになった意義は非常に大きく、このコンビによるバルトークやコダーイはスタンダードな名盤としてオススメ!
 
diskunion新宿クラシック 怪傑猫猫丸
 

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