★猫丸しりいず第131回

●猫丸しりいず第131回
 
◎モーツァルト:音楽の冗談
 
 オトマール・スウィトナー指揮 ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
(独BERLINCLASSICS BC300137)
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とかく日本人は「苦手」と言われる事の多いユーモア。
 
「ユーモアのセンス」というのは「学習」や「訓練」で身に着くものでは無いだけになかなか厄介だ。ユーモアは咄嗟(とっさ)に出るかどうかが勝負なので、頭の回転の速い人でないと厳しいし、頭の中に「引き出し」が沢山ないと当意即妙な一言がパッと出てくるとは思えない。では、私が特に好きな「ユーモア発言」を二つご紹介。それはいずれも政治家の口から発せられたもの。どちらも当人が窮地に陥った際に発せられた一言で、こんな局面でこういう一言が出せるような器の大きい?人になりたい、とつい思ってしまう傑作である。
 
その一。1981年にアメリカのレーガン大統領(当時)が狙撃され九死に一生を得た大事件があったが、弾丸の摘出手術の前に彼が執刀医たちに対して飛ばしたジョーク、「ところで君たちは全員共和党員だろうね」。それに対して執刀医が発した「大統領、ご心配無く。今日一日は我々は全員共和党員なので」という返答も気が利いている(実際は、執刀医は民主党員だったというオチまであって完璧である)。当時高校生だった私は、このやりとりを新聞記事で知った時思わず吹き出してしまい、それまで「タカ派」のイメージが強烈でどうも親しめなかったレーガンさんに急に親近感が湧いたのを思い出す。
 
そのニは、往年の日本の大物政治家の三木武吉(1884~1956)が、演説会で政敵に「三木は愛人を4人も囲っている」と攻撃された際、何食わぬ顔で「訂正します。正しくは5人であります」とやり返し、聴衆の大爆笑と大拍手を呼んだというエピソード。他にも彼には「家賃を2年以上滞納している」と追及されたら「いや、3年以上滞納している。間違いは正しておかないとイカン」と答弁したとかの爆笑エピソードが目白押し(「政界の大狸」の異名をとった怪人だったらしい)。こういう豪傑、と言うか「大物」の政治家が居なくなったのはクレンペラーやクナッパーツブッシュのような変人マエストロがもう見当たらないクラシック音楽界と同様、時代の流れなのだろうか。
 
音楽の世界でも、(パロディものは別として)曲の発想そのものにユーモアが感じられる作品はいろいろある。それらはおおよそ、曲全体をユーモラスな発想で構築した「知能犯」型の曲と、一見普通のたたずまいの楽曲にギャグ的フレーズをはめ込んだ「唐突型」の曲に分別する事が出来るように思う。以前この「猫丸」でネタにしたヒンデミットの大怪作「朝7時に湯治場の二流楽団によって初見で演奏されたさまよえるオランダ人序曲」や、フレンチカンカンを超スローテンポで弾かせる「動物の謝肉祭」の『亀』などは「知能犯」型の代表例と思われる。
 
一方、結果的に「唐突型」の代表選手になってしまった・・と思えるのはご存じモーツァルトの「音楽の冗談」。下手糞な演奏家や作曲家たちを揶揄した・・とも言われるこの曲。モーツァルトという男は冗談好きであったらしく、下ネタ、尾籠ネタも含めてしょっちゅうしょうもないギャグを飛ばしている奴だったそうだ。ただ、そんな愉快な男の作品としては、「音楽の冗談」はちょっと「不完全燃焼」なんじゃないかという気が私にはしてならない。と言うのは、この曲、基本的な造りが今の聴き手の耳にはマトモに過ぎて、時折挿入される「ギャグ的」楽句がちょっと唐突すぎるように思えるのだ。
 
モーツァルトは彼なりに、わざと楽章や楽器編成のバランスを崩したり、通常の古典派音楽のスタイルから外れた技法を用いたりして、滑稽さを演出しようと努力、工夫をしているのだが、その後のロマン派~近現代の「何でもアリ」の音響世界に慣れた耳には、その程度の「アンバランス感」は最早奇異に感じられなくなってしまった上、モーツァルトという天才のフィルターを通した事で、全体が皮肉にもキチンと整ったモーツァルトらしい作品に仕上がって「しまった」結果、誰の耳にもわかりやすいギャグ的な箇所(音外しとか)がことさら目立つ結果となったのだろう。「知能犯的ユーモア楽曲」を目指したものの、天才すぎた彼には凡才の再現は難しかったのか・・。ご紹介のスウィトナー盤は、実に端
正な名演奏で、オケの響きも最高に美しい。しかし、その美点が「冗談度」をさらに薄めているのも確か。これを「名演」と言ってよいのかどうか・・。ウ~~ン、混乱♪
 
 最後に一言。
「どんな無能な作曲家でも、こんなバカな事やらんだろう」という手法を徹底した結果生まれた名曲ラヴェルの「ボレロ」。この曲なんぞは「知能犯型冗談楽曲」の極致と思われるのですが、如何で御座いましょうか?
 

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