★猫丸しりいず第136回

●猫丸しりいず第136回
 
◎ヤナーチェク:グラゴル・ミサ
 
 サー・チャールズ・マッケラス指揮  デンマーク国立放送交響楽団&合唱団 他
 (英CHANDOS    CHAN9310 ※原典版による初録音)
 サー・チャールズ・マッケラス指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 他
 (国内DENON/SUPRAPHON COCO70412)
 
ffeccb74.gif70b8d3d2.jpeg
「超個性派大作曲家」の真打ちはアナタしかいません! レオシュ・ヤナーチェク!
まさに唯一無二と思えるこの人の音楽のユニークさをコトバで語るのは本当に難しい。
 
初めて接した彼の作品は、高校生の時に聴いた「グラゴル・ミサ」。とにかく衝撃的だった。そのヘンテコな跳躍の多い旋律、独特のオーケストレーション・・・。その後「シンフォニエッタ」「タラス・ブーリバ」等々の名作を聴き進んでいったのだが、その度に衝撃度は強まるばかり。オーケストラという同じ演奏形態を用いながら、コトバに例えれば「全く別の言語」を聴くような「心地良い違和感」みたいなものに私はすっかりハマってしまった。こういう感覚にハマった事は、他に中学生の時に聴いた友川かずき(秋田弁丸出しのフォークシンガー)の歌くらいしか、思い浮かばない。
 
ヤナーチェクの音楽には「構築」という感覚がほとんど感じられない。何と言えば良いのか、平原に立っていたら地面のあちこちからピョコピョコと芽が出てきて、「アレ?何だコレ? どうしたんだ?」と戸惑っているうち、気が付いたら周りは一面の花畑になっておりました・・・という風情のあの作風。彼の音楽に対し、「形式を重視する西洋の伝統的な求心的な楽式に対抗する『遠心的』とも言えるような楽曲構成」という文を読んだ事があるが、非常に当たっていると思う。
 
「面白い曲を書く作曲家は面白い奴に決まっている」という芥川也寸志氏の名言があるが、ヤナーチェクという男も相当にユニークな人物だったようだ。直情型で、思った事をすぐ口に出してしまうタイプだったらしく、若い頃初めての子供(女の子)が誕生した時、期待していた男児でなかったので「な~んだ、女か」的な態度になってしまい、激怒した奥さんが実家に2年も引きこもってしまった、とか、自作の初演に立ち会った際にその演奏が気に入らず、
演奏が終わるや否や壇上に駆け上がって「皆さん!これは私の作品なんかじゃありません!」と聴衆に大演説を始めたり・・等々の珍エピソードには事欠かない。
 
極め付けは晩年に40歳近くも年下の人妻に恋をして600通(!)以上もの手紙を送り、最後はその女性の子供が迷子になった時に、雨の中を周りが止めるのも聞かずに探しに出かけた挙句、肺炎に罹って死んでしまったという凄い話。もっとも、この位のパワーの持ち主で無ければ晩年に続々と傑作を生み出すという事も出来なかったであろう。この怪人に感謝しなくっちゃ・・・。
 
さて、ヤナーチェクの作品の普及に多大な功績を遺したのが巨匠マッケラス。アメリカ生まれ、オーストラリア育ちのこの指揮者が東欧の作曲家のエキスパートというのは一見奇異な感じだが、実はこの人はチェコの巨匠ターリヒの弟子。ウィーン・フィルと組んでDECCAに次々と録音された一連のヤナーチェクの作品集の存在無くして、この作曲家が今日のようにグローバルな存在になったとは思えない。手間と経費がかかるけど、それが回収出来る保証も無いような地味な作品をどんどん録音出来たのは、当時まだレコード会社にそこまでの「余裕」があったという事か。
 
彼の振る「グラゴル・ミサ」をあえて今回2種ご紹介。チェコ・フィルとの盤は一般的な版によるスタンダードな名演だが、ユニークなのはシャンドス盤。「原典版による初録音」と謳っており、この曲を熟知した方なら通常の版との違いに気付かれるだろうが、何と言っても度肝を抜かれるのは通常は終曲の「イントラーダ」がいきなり曲の冒頭に登場する事。初めて聴いた時は「編集ミスか?」と焦ってしまった。この「原典版」、終曲にも「イントラーダ」が登場するので、都合2回の「イントラーダ」でミサを挟み込むような形態になっており、当初はシンメトリー的形態を目論んでいたらしい事が伺える。ヤナーチェク好きならこの珍バージョンはお聴き逃しの無いように・・・
 
「クラシック音楽界の秋田・山形弁」と言いたいヤナーチェクのユニークすぎる作品群は、これからも私の「オトモダチ」であり続けるであろう。
 

Entrance







Classical Broadcasting for YouTube



Topics





About


 

diskunion Link








 

















Calendar

07 2017/08 09
S M T W T F S
1
12
15
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

Search

カウンター

Copyright © diskunion Shinjuku Classic-Kan All Rights Reserved