★猫丸しりいず第137回

●猫丸しりいず第137回
 
◎グラナドス:歌劇「ゴイェスカス」間奏曲、スペイン舞曲集(抜粋) 他
 
イーゴリ・マルケヴィッチ指揮 スペイン放送交響楽団
(国内PHILIPS UCCP3401)
 
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人の一生は、様々な偶然の積み重ねである。
 
生まれた場所、時代、家庭環境、人や仕事との出会い・・・。それぞれがどう組み合わされていくかによって、その人の人生はガラリと変わってしまう事もある。それらの事象一つ一つは「偶然」に左右される事がほとんどで、「最初からそのように運命づけられてました」的な「運命論」には私はあまり与したくない。
 
が、「偶然の積み重ね」が取り返しのつかない結果をもたらす事もある。それをしみじみと感じさせるのが、近代スペインの代表的作曲家エンリケ・グラナドス(1867~1916)の不運としか言いようの無い最期。
 
バルセロナを本拠に作曲家、ピアニストとして大活躍した彼は、同じスペイン出身の画家ゴヤの絵画に心酔していた。ゴヤの絵に霊感を受けて作曲された名作ピアノ曲「ゴイェスカス(ゴヤ風の作品という意)」を素材に生まれたのが歌劇「ゴイェスカス」。彼はもともとこの歌劇をパリで上演する意向であったが、折悪しく第1次世界大戦が勃発し計画が頓挫。
そこに「ウチで初演しませんか?」と声を掛けてきたのがニューヨークのメトロポリタン歌劇場。旅嫌いで知られた彼だが、この時ばかりは、はるばる大西洋を渡ってニューヨークへ。その甲斐あったか初演は大成功。当時のアメリカ大統領ウィルソンに「ピアノの演奏会をやってくれ」と招かれた程であった。一国の大統領直々の要請に意気に感じたのか、グラナドスは既に決まっていた帰国予定を変更してリヴァプール経由のフランス商船「サセックス」で帰国する事に。
 
これが運命の分かれ道であった。
 
彼の乗った「サセックス」は英仏海峡でドイツ海軍の魚雷攻撃を受け沈没。不幸にも彼はまだまだこれから・・という48歳の若さで不慮の死を遂げる結果となってしまった。もしも「ゴイェスカス」が予定通りパリで初演されていたら、初演の場所がアメリカで無かったら、ウィルソン大統領がコンサートの要請をしなかったら、そして何よりも第1次大戦という時代のさなかで無かったら・・・  我々後世の聴き手は更に多くのグラナドスの傑作を耳にし得たかも知れない、と思うと残念でならない。それにしても、今この時の判断、選択が自分の一生を左右するかもしれない・・と考えれば考えるほど、何やらオソロシイではありませんか。
 
今回ご紹介の一枚は、鬼才マルケヴィッチによる「スペインモノ集成」アルバム。20世紀を代表する天才指揮者でありながら、B級オケとの仕事が多かったというのが実にマニア心をくすぐるこの人。晩年に来日して久々に日本フィルに客演し、横浜で演奏した「春の祭典」を私はナマで聴く機会に恵まれたが、あのオーラ漂う指揮姿と演奏の素晴らしさには生涯忘れられないであろう感銘を受けた。この「スペイン名曲集」は前半にラヴェル、シャブリエの作品、後半にグラナドス、アルベニス、ファリャの「近代スペイン御三家」の作品が収録されている(グラナドスの「スペイン舞曲集」はスペイン作曲界の後輩、エルネスト・アルフテルによる編曲版)。続けて聴くと分かるが、フランスの巨匠2人による作品が
あくまでも「フランス人の目」というフィルターを通して「洗練」されたスペインという感じなのに対し、スペインの作曲家たちによる作品群はもっとスペインの「大地の風」「土の匂い」みたいなものが感じられる。その対照が実に面白い。中でも「スペイン舞曲集」は、アルフテルのアレンジも、この盤の演奏も良い意味で実に田舎臭いのが素晴らしい。洗練された小奇麗なレストランでなく、地元民御用達の一見薄汚い屋台で飛び切りウマいものに出会った時のような心地良さが味わえる逸品!
 

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