「二人のカルメン」

☆猫丸しりいず第19回

「二人のカルメン」


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ビゼー:「カルメン」組曲
 サー・ネヴィル・マリナー指揮
ロンドン交響楽団 (独PHILIPS 446198-2)

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ビゼー(シチェドリン編曲):カルメン組曲
ミハイル・プレトニェフ指揮 
ロシア・ナショナル管弦楽団 (独DG 471136-2)

「カルメン」

この上ない名作である。

「尻尾までアンコが詰まった鯛焼き」では無いが、
これほど初めから終わりまでどこを切っても名ナンバー揃いというオペラは、
他にあまり無いのではないだろうか。
鮮やかでわかりやすいストーリー展開も良いし、歌詞も素晴らしい。
例えば、かの有名な、カルメン歌う「ハバネラ」。こんな感じの歌詞だ。
 
「恋は野の鳥のようなもの。飼いならす事など誰にも出来やしない。
いくら呼んだって無駄さ。来たくなけりゃ、来やしないんだから。
まんまと捕まえた!と思ったら、羽ばたいて飛んで行っちゃうし。
遠くへ行っちゃった・・・と思って、待つ気も無くなった頃にまたやって来て、
今度はこっちが捕まっちゃうんだよね・・・」

(多くの対訳は、あまりに表現が文語的で「硬すぎ」なので、
かなり「猫丸流」にアレンジした事をお許し下さい)
 
「理性」だけではコントロール不可能な「恋」というものの本質を、
見事にえぐっている素晴らしい歌詞ではないだろうか。

同時にこの詩は、「恋」に正直に生きすぎたカルメンの悲劇的な
最期をも暗示しているのであるが・・・・

さて、オペラの全曲盤から組曲に至るまで、
「カルメン」の録音はほぼ無数に存在する。
私がこれまでに聴いた多数の録音の中から、最も印象に残った1枚をご紹介。
 
ヘソ曲りで「典型的水瓶座人間」である私が、普通の名演をご紹介するワケも無い。
ご登場いただくのはマリナー指揮によるこの1枚。

ここまで「血生臭さ」や「ギトギトしたラテンのノリ」の無い「カルメン」は、
他に皆無なのではないだろうか。
冒頭の「闘牛士」からして、遅いテンポで柔和な表情の演奏。
「あばずれ女カルメン」じゃなく、まるで「貴婦人」のよう。

70~80年代はじめのフィリップスらしい、「ふんわり」とした録音も、
その傾向に拍車をかける。
何だかコッテリした油絵ではなく、淡い水彩画を見ているような、
独特の「カルメン」。ビゼーの音楽のリリカルな美しさを見事に引き出した
この演奏に「こんなやり方もあったのか!」と驚かされる。
 
ロンドン響の管楽器の名手たちの素晴らしい演奏も聴きものだ。
あまりに「本流」から外れた個性的な演奏であるゆえ、
これを褒めている文章に出会った事がないのだが、
私としては断固支持したい1枚である。


続いて、個性的なもう一人の「カルメン」をご紹介。
それは、現代ロシアの大御所、シチェドリン(1932~)が、
夫人の名バレリーナ、プリセツカヤのために編曲した、
弦楽合奏と打楽器のための「カルメン組曲」である。

私はシチェドリンの大ファンなのだが、この人メチャクチャ器用でアイディアマンだ。
 
この人の真骨頂を感じさせるのが、プレトニェフ盤だとトラック9に入っている、
カルメンでも最も名高い「闘牛士の歌」の部分。
曲が進んで、あの有名な「ト~レアド~ル♪」のメロディが高らかに
歌われる「はず」の部分(0分44秒~)。

何とここでシチェドリンは、その旋律をスパッとカットし、
完全な「カラオケ状態」にしてしまう。何たる荒ワザ!

勿論、本来奏でられるはずの旋律を皆が知っているからこそ成立する
「暴挙」であるのだが、これが素晴らしい効果を生んでいるのだ。
そして、弦楽合奏だけで奏でられる「花の歌」。
これが原曲とはまた違った、胸を掻きむしられるような素晴らしさ。

ここから「カルタの歌」を経て、カルメンの破滅に至るまでの緊迫感。
そして、最後に、「天国のカルメンさん。こんな事もありましたよね。」という感じで、
静かに鐘の音で鳴り響く「ハバネラ」の断片・・・・
「カルメン」の世界を40分に凝縮して見せる、素晴らしい逸品である。

ついでだが、カップリングされた2曲も必聴の名曲。
最初の「お茶目なチャストゥシュカ」は、
特に吹奏楽やジャズが好きな方にはお聴きいただきたい。
こんな「クラシック音楽」がアリなのか?と驚く方も多いだろう。
そして、バーンスタイン&ニューヨーク・フィルの委嘱作である「鐘」も最高だ。

「シチェドリン好き」が一人でも多く増殖する事を願いつつ、

今回はココまで・・

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