猫丸しりいず 第22回「銀河鉄道の夜」

☆猫丸しりいず 第22回
 ●ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
キリル・コンドラシン指揮 
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(独DECCA 448245-2)  
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小学生の時に読んだ「銀河鉄道の夜」を、30数年ぶりに読み直した。

銀河の彼方の天上の世界に向かって、これからそこに召される死者たちを乗せた列車が、
どこまでも夜空を走っていく・・・ 

宮沢賢治のイマジネーションの凄さと豊かさには、今さらながら驚いてしまう。
子供の時は、ストーリーを追うだけで精一杯だったのだが、
今こうして 読み返してみると、物語のあまりの深さ、哀しさに
心を揺さぶられないではいられない。

「大人の目」で読んで、初めて気付いた箇所もいくつかあった。

例えば、銀河鉄道は遊園地の遊覧鉄道のような、小さな「軽便鉄道」である事。
主人公の2人の少年、ジョバンニとカムパネルラの持っている「銀河鉄道の 切符」は、
それぞれ別の種類であった事
(その事は、二人が既に「生の世界」と 「死の世界」に
分かれてしまっている事を暗示しているのだろうか)。

物語の後半に行くほど、「読点」が極端に減り、
一つのセンテンスが異様に長くなっている事(その分読みづらくなっている)。

途中から乗車する幼い姉弟のエピソードは、
明らかにあの1912年の「タイタニック号」の遭難が素材となっている事。 など

しかし、読んでいて一番「ハッ」とさせられたのは、この箇所であった。
 
『そしてまったくその振子の音のたえまを遠くの遠くの野原のはてから、
かすかなかすかな旋律が糸のように流れて来るのでした。

「新世界交響楽だわ。」

姉がひとりごとのようにこっちを見ながらそっと云いました。』

「銀河鉄道の夜」に、この名曲が登場していた事を、
私はすっかり忘れていたのである。

宮沢賢治は、クラシック音楽を好み、レコードコレクターであった事が知られている。
(「セロ弾きのゴーシュ」の冒頭に出てくる「第六交響曲」は、
賢治の好きな「田園」と言われている。)

「新世界」に関しても、イギリスの作曲家&指揮者のハミルトン・ハーティの指揮した
コロムビア盤のSPを持っていたらしい。

賢治が「新世界」のどの箇所をイメージして、この物語に採り入れたのか。
それはわからない。 郷愁に満ちた第2楽章なのか、
それとも未来への希望や憧憬に溢れた終楽章なのか・・・・

ただ、全体が青白く輝く宝石のように、冥界のヒンヤリとした
感触が終始つきまとうこの物語
(個人的にはシベリウスの「交響曲第6番」をイメージしてしまう)
の中にあって、この「新世界」のエピソードの箇所は、
唯一「血潮の温もり」(「生の世界の温もり」と言っても良いかもしれない)
を強く感じさせ、この上なく 印象的だ。

これからしばらくは、「新世界」を聴くたびに「銀河鉄道の夜」が脳裏に浮かび、
また読みたくなってしまうのかもしれない。

本当に汲めども尽きぬ味わいを持つ名作である。

さて、まさに「星の数」ほどある「新世界」の録音の中で、
私が最も好きなのがこのコンドラシン盤。
この指揮者が亡命後、「西側」(もはや死語となりつつあるが)
のオケと遺せた貴重な録音の一つ。
 
指揮者の燃えるような表現意欲と、
オケの美しくしなやかな音色が最高の状態で噛み合い、
とてつもない名演となっている。
 
第1楽章や終楽章の随所で唸りをあげるようなオケのド迫力には
思わず手に汗握ってしまうし、東欧の曲に他の追随を許さない、
独自の味わいを持つウィーン・フィルの魅力が全開した演奏だ。

昔LPで購入した時からの愛聴盤なのだが、
発売当時からなぜかホトンドその存在を無視されているような、不憫な名盤である。
ぜひ、「銀河鉄道」とセットでどうぞ・・・

※余談だが、この「銀河鉄道の夜」で、もう一つ非常に印象に残った言葉がある。
それは、乗客の燈台守がつぶやくこの言葉。
(読点が全く無いが、これは原文のまま)
 
『なにがしあわせかわからないのです。
ほんとうにどんなつらいことでも
それがただしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんな
ほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。』

人間を40年以上やっていると、
「本当にそうだよなあ」と心から共感できるセリフであった。

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西田猫丸

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