猫丸しりいず 第23回

☆猫丸しりいず 第23回

●ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲 ピエール・デルヴォー指揮 
コンセール・コロンヌ管弦楽団 (国内EMI TOCE13390)
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●「空よ」~トワ・エ・モワ
(国内EMI TOCT26319 「エッセンシャル・ベスト」)
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当たり前の事だが、

楽曲における「最初の部分」というのは、非常に肝心である。
 
「運命」や「トッカータとフーガ」や「ツァラトゥストラはかく語りき」のように、
その鮮烈なスタートで、聴き手を虜にしてしまう曲は少なくない。
 
陰鬱な「悲愴交響曲」、神秘的な「火の鳥」などは、
そういうキャッチーなインパクトには欠けるが、
「こういう世界を描いた音楽なんですよ」
という「鑑賞のための道筋」みたいなものをキッチリ示してくれている。

音楽というものには、「必ず」そういう
「わかりやすい冒頭部分」や「道筋」が伴っているものだ・・


と信じきっていた中学生の頃の私に大きな衝撃を与えた曲。


それが「牧神の午後への前奏曲」である。

「20世紀音楽への扉を開いた」と言われる、この名曲に関して、細かい説明は不要であろう。
あの中空にホワ~ンと漂うような、冒頭のフルート・ソロ。
強固な「調性感」や「構成感」をまるで感じさせない、その後の曲の進行。

初めてこの曲を、アンセルメのレコードで聴いた時、
私はその意表を突いた冒頭部分に、ただただ呆気にとられてしまい、
「何じゃこりゃ」と混乱しているうちに曲が終わってしまった事を、よく覚えている。
 
もちろん今となっては、あの冒頭部分も、その後の曲の進行も、
周到に考え抜かれた上での事と理解できるのだが、
初めて聴いた時の自分には「全くワケのわからない曲」としか感じられず、
この曲の真価を理解できるまでには、その後かなりの時間が必要であった。

加えて、「理想の名演」にめぐり合うまでには更に永い時間を 要した。
この曲の名演は数多い。
しかし、どの演奏を聴いても、自分には
今ひとつ「何かが足りない」という感じが残ったのだ。

いったい何が足りなかったのか。

この曲の素材となったマラルメの詩の内容には、
牧神が夢うつつの中で、「妖精たちに欲情し・・」という部分がある。
そう、この曲には「清楚でありながらセクシー」という、
非常に難しい要素が(私としては)必須だったのだ。

しかし、どの演奏も「清楚」ではあっても「セクシー」とは感じられなかった。
そんな演奏ってムリなのか・・・と諦めかけていたところに出会ったのが、
このデルヴォー盤。冒頭の物憂いフルートに続く、ホルンの物凄いヴィブラート!
 「おお!そう来なくっちゃ!」
と一気に魅了されてしまう。
そして、中間部から後半にかけての、危ないほどにセクシャルな「熱さ」。
 「こういう演奏が聴きたかったんだ・・」と、まさに「一目惚れ」状態であった。
 
この演奏に関しては、好き嫌いがはっきり分かれるだろうな・・とは思うのだが、
まさにスタートから結びまで「不安定」な事が、
この上なく魅力的なこの曲の
「アブナさ」を十二分に引き出した
稀有な演奏
として、
忘れがたい1枚である。
 
「思わぬ冒頭にビックリ」といえば、
自分にはもう一つ、忘れがたい曲がある。
それもクラシックでは無く、なんと「歌謡曲」なのだが、あえてご紹介したい。

それは、トワ・エ・モワのヒット曲「空よ」。

トワ・エ・モワと言っても、
今の20歳代以下の若い方々は知らない方も多いのではないだろうか。
この「空よ」も、1970年のヒット曲。もう40年も昔の曲になってしまった。
 
この歌を小学生時代に初めて聴いた時の、あの大きな驚きを忘れる事が出来ない。
イントロが終わって、最初の歌詞「空よ」。
これが、意表を突いた凄く低い音域で始まるのである(イントロが非常に軽やかなので、
この低音の効果がなおさら強調される)。

しかも、その次の歌詞「水色の空よ」の部分で、
通常の「水色」という言葉のアクセントを全く無視した、
捻転したようなメロディで、一気に1オクターヴ上まで到達してしまうのだ。
その後、高音域で流麗なメロディが続くのだが、最後に「空よ、教えてほしいの」と、
冒頭の低域から高音域へ一気に駆け上がるメロディが回帰して終わる。

この曲がもし定石通り、高音域の美しいメロディだけで出来ていたとしても、
それなりの名曲にはなったであろう。
しかし、曲頭のあの意表を突いた「低音域」が無かったとしたら、
小学生のお子様をも
「エエッ?!」と驚愕させるような、
強烈な印象は残さなかったのではないだろうか。

大人になって、この破天荒な凄い曲をいったい誰が作ったのか?
という事を調べて、二度ビックリしたのだが、
この「空よ」は所謂プロの作曲家では無く、
音楽好きのアマチュアの人が作詞作曲した曲だったのだ。

ところでこのトワ・エ・モワのベスト盤、他にも
「虹と雪のバラード」「季節はずれの海」 「初恋の人に似ている」
「地球は回るよ」「リンゴの花の下で」など名曲の嵐である。

村井邦彦、安井かずみ、北山修、加藤和彦、東海林修・・といった
超豪華メンバーが携わっていたのであるから、それも当然だろう。

確かに今の耳で聴くと、多少「イモ臭い」感じは否めないが、
これらの曲が歌われていた1960~70年代の日本、そう、公害とかインフレとか、
いろいろな問題はあったものの、
まだ皆がニッポンという国の「未来」を信ずる事が出来た
あの時代の「空気」が横溢しているのが、今聴き直すと実に印象的だ。
若い皆様にも、是非ご一聴をおススメしたい。

今回はここまで・・・


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猫丸哲哉

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