猫丸しりいず第37回

猫丸しりいず第37回  
コダーイ:ハンガリー民謡「孔雀」の主題による変奏曲  
ネーメ・ヤルヴィ指揮 シカゴ交響楽団
(英CHANDOS CHAN8877)

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「飛べよ、孔雀 牢獄の上に
哀れな囚人たちを 解放するために

孔雀は飛んだ 牢獄の上に 
だが、囚人たちは 解放されなかった  

孔雀は飛んだ 牢獄の上に 
哀れな囚人たちを 解放するために」   

「その曲が流れ始めると、他の事が手に付かなくなってしまう程に大好きな曲」

というのが、きっとどなたにもあるだろう。  

私にもそういう曲は多いが、中でも筆頭なのが、このコダーイの名作である。
タイトルが長すぎるので、普段は「くじゃくの変奏曲」とか
「ピーコック・ヴァリエーション」とか略してしまっているのだが・・・

この曲は、アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団の
創立50年記念の委嘱作として作曲され、
1939年にメンゲルベルクの指揮によって初演された。

「孔雀は飛んだ」というハンガリー民謡を素材にした曲なのだが、
冒頭に掲げたのはその民謡の歌詞である。  
この民謡は、古くからトルコの抑圧を受けていたマジャール(ハンガリー)民族の、
自由に対する情熱を歌ったものだそうである。なるほど、
「どんな困難にもめげずに、自由を勝ち取るんだ」
という意志の感じられる詞である。  

この曲が作曲された1930年代終わりと言えば、
ヨーロッパがナチス・ドイツの抑圧に苦しみ、
そのまま第2次世界大戦の悲劇へ進んでいく過程にあたっている。
第2次大戦において、ハンガリーはドイツや日本と同じ、枢軸国側であった。  

「権力へのレジスタンス」というメッセージを秘めたこの名曲は、
早速初演の翌年には、祖国ハンガリーで演奏禁止の憂き目にあってしまう。
当時のハンガリーの親ナチ政権の、コダーイに対する嫌がらせなのは明白だ。

どうして権力者、独裁者は、こういう事だけには敏感なのだろうか。

ペンタトニック(五音音階)を用いたこの曲のテーマは、
実にアジア的・・・と言うか、日本の民謡に近い。

ご存知のようにマジャール民族は「アジア系」であるが、
同じ「アジアの血」を感じずにはいられない。
フルート・ソロによる第14変奏には、おもわず
「藁ぶき屋根の日本家屋と囲炉裏」を連想してしまうし、
最後の「マエストーソ」で雄大に歌われるこのテーマには、
理屈を超えて胸にグッと来るものがある。

(昔、クラシックを全く知らない友人に、この曲を聴かせたところ
「NHKの大河ドラマのバックに流しても全然違和感が無い曲」という、
かなりスルドイ感想が返って来た事がある)  

穏やかで優しく、声高に叫んだりする事もなく、日常をしっかり生きているが、
権力からの不当な弾圧には決して屈しない強い意志を秘めた、気丈で美しい女性。  
私はこの「孔雀の変奏曲」に、ついそんな「人格」を勝手に想像し、
愛おしくなってしまうのだ。  

この曲の名演盤はいくつもある。
ショルティが晩年にウィーン・フィルを指揮したDECCA盤は、
東欧の曲に比類ない味わいを発揮するVPOの演奏が素晴らしいが
指揮はちょっと鋭角的すぎる気もする。
意外な名演が、NAXOSから出ているリーパー指揮スロヴァキア放送響のもの。
オケは決して一流とは言えないが、その鄙びた響きがこの曲と抜群の相性を見せる。

ご紹介するヤルヴィ盤は、力こぶの入った指揮も良いし、
シカゴ響もさすがの巧さなのだが、オケの響きがドライに過ぎる。
なかなか「完璧に気に入る」演奏というのは無いものだ。
ただ、カップリングの「ガランタ舞曲」が素晴らしい名演なのと、
美しい「孔雀ジャケ」がお気に入りなので、ご登場いただく事にした次第。  

残念なのは、この曲を委嘱したコンセルトへボウ管による録音が、
初演者のメンゲルベルク以外見当たらない事。
(私が知らないだけなのか?)
「春の花曇り」みたいな独特の魅力的な音色を持つ、このオケの演奏で、是非聴いてみたい。

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