猫丸しりいず第40回

★猫丸しりいず第40回

◎バーンスタイン/ミサ曲
マリン・オールソップ指揮 ボルティモア交響楽団 他 
(NAXOS 8559622~3 2枚組)

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バーンスタインが世を去って、早くも20年が経とうとしている。

ようやく最近は、「指揮者」としての彼とほぼ同格に
扱われているように思われる「作曲家バーンスタイン」だが
「ウェストサイド」や「キャンディード序曲」といった超有名作を除いた上で

「作曲家バーンスタインの代表作は何か?」と問われたら
「ウ~ン・・」と考え込んでしまう方が今でも多いのではないだろうか。

私の大好きな、この「ミサ曲」。これも彼の「代表作」とは言い難いし
そもそも「傑作」なのかどうかも、人によって大きく評価が割れるだろう。

しかし、「この人が、この時代に書いた」のでなければ、
決して生まれなかったであろう、ユニーク極まりない作品である事は間違いない。

この曲は、発表時に保守的な聴衆や演奏家からの猛反発を喰らい、
以後今日に至るまで「問題作」のレッテルを貼られ続けている作品である。

それは何故か。
 
一つは、古典的なミサ曲の形式を借りながら、
そこにロックやブルースを丸のままブチ込んでしまった
破天荒な曲の形態によるのだろう(オーケストラと一緒に
しっかり「ロックバンド」が編成に含まれている)。

多分今でも、保守的なクラシック・ファンの方は、
まるでミュージカルのようにポップな「キリエ・エレイソン」に腰を抜かし、
ロックやブルースが闖入するに至って
「これはクラシックじゃない!」と激怒するかもしれない。
(逆に1970年前後の洋楽ポップスに親しんだ方には、非常にスンナリ受け入れられるかも)

しかし、恐らくもっと大きな要因と思われるのは、
「信仰に対する不安や懐疑」という非常に危うい問題を、
あまりに正面きってとり上げた事ではないか。

この曲が生まれたのは、1971年。
第二次大戦勝利のあと「アメリカ万歳、万々歳」で繁栄を謳歌してきたこの国が、
JFKの暗殺あたりから雲行きが怪しくなり、
やがてヴェトナム戦争の泥沼にハマって・・・という、そんな時代である。

なんか、同時多発テロのあと、イラク&アフガン&不況の泥沼にハマッた
今のアメリカとも通じるものがある。 
  「信ぜよ」と歌う古典的なミサの歌詞に対し、
「それで本当に救いがもたらされるのか」という迷いや
疑念をロックやブルースの歌手たちがぶつける。

まさに「ヒッピー」の全盛時であったこの時代を象徴するような曲である。
歌詞に非常にインパクトがあるのだが、中でも特に印象的なのはロック歌手が歌うこの詩。

「神様。アンタがそんなに偉大なら、俺たちがどこにどうやって進んでいけば良いのか、
教えてくれよ。もう待てねえんだ。今すぐな。多分もう遅すぎるんだけどね、神様。
俺にはわかんねえんだよ」(猫丸訳)  

現実の問題、苦悩を信仰が解決してくれない、と民衆たちの不満は爆発寸前。
そして、「信ぜよ」と説く側の祭司もまた迷い、苦悩する。
ポップで聴きやすい曲に込められたメッセージは実に苦い。

この曲、長らく自作自演盤が唯一の音源だったが、
最近になってケント・ナガノ指揮の名盤が生まれ、
この最新のオールソップ盤もなかなかの秀演である。
自作自演盤にある、「自意識過剰気味な濃さ」が暑苦しく感じられる方には特におススメだ。
「信ずるものは救われる」?でも「信ずるだけでは救われない」のか?

ウ~ン、難しい問題だ・・・・・  

ではまた次回。

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