◎猫丸しりいず第43回

◎猫丸しりいず第43回

★ポポフ:交響曲第1番 
レオン・ボッツタイン指揮 ロンドン交響楽団 
(米TELARC CD80642)
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★ポポフ:交響曲第2番「祖国」・赤軍運動 
アレクサンドル・ティトフ指揮 サンクトペテルブルク交響楽団 
(露NORTHERN FLOWERS NF/PMA9977)      
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思えば私が子供の頃、「ベルリンの壁が崩壊」するとか、
増してや「ソ連という国が地球上から消滅」するなどという事が
実際に起こるなんて、想像する事も出来なかった。    

しかしそれが現実の出来事となってから、早20年。
今や「ソ連」は歴史上の存在として「回顧」される対象になりつつあるようで、
ソ連時代に域内のローカルな存在にとどまっていた色々な作曲家に対しても、
このところ発掘、再評価の気運が著しい。

今回ご紹介するガヴリール・ポポフ(1904~1972)もその一人。 
   
ソ連系楽曲ヲタク以外には、まだほとんど知られていないこの人、
生没年からお分かりのように、ショスタコーヴィッチと全くの同世代である。
 
国家権力があらゆる芸術を牛耳り、
当局の意向にそわないものには徹底的な弾圧を加えたソ連時代、
多くの作曲家が弾圧の荒波に翻弄された。ポポフはその典型的な一人と言える。

この人の人生を左右する事となったのが、
ロシア・アヴァンギャルドの金字塔とも言うべき「交響曲第1番」の初演(1935年)。

不協和音と大音響の渦巻く過激な曲で、特に、
スクリャービンの「法悦の詩」を連想させる終楽章は凄まじい。

コーダの部分は「法悦の詩」を更にヤバくしたような危険で
ケタタマシイ響きが聴き手を圧倒する。    

「音楽は須らく前向きで平明であるべし」という当局の意向に、
真っ向から歯向かうようなこの問題作は、すぐさま検閲委員会に目を付けられ、
コテンパンに叩かれてしまう。
結果、この曲は演奏禁止となり、とうとうポポフの生前に演奏される事は無かった。

ショスタコーヴィッチが、同じ頃作曲した「交響曲第4番」の初演を見送り、
そのまま25年もお蔵入りさせた事は有名だが、
もし初演してしまっていたらポポフと同じ目にあっていた事は充分に考えられる。    

この時代の「弾圧」は「死」を意味する事もあったワケだから、
命を失わなかった彼は、まだ幸運だったのかも知れないが、
この当局との衝突によって彼は「軌道修正」を余儀なくされる。

「改心」した彼が、8年後の1943年に発表したのが「交響曲第2番」。    
聴いてみると「第1番」とは別人の作品か?と思うくらい、
「正しくソ連的にわかりやすい」交響曲になっているのに驚く。

第2楽章なんてほとんどグリエールの曲だし、
終楽章の堂々たる英雄的盛り上がりも「ソ連系王道」という感じ。
カップリングされた「赤軍運動」に至っては、
まさに絵に描いたような「共産主義プロパガンダマーチ」に
仕上がっているのに驚くばかり
(この交響的マーチ、実に血湧き肉踊る超名曲!大音量で聴くべし!)。  

こういう「豹変」ぶりは「権力への妥協の産物」と見なされがちで、
その事は作品の評価にも不利に働く事が多い。
確かに、ポポフの内部に「妥協」が全く無かったワケではないだろう。
しかしその事と、出来上がった作品が傑作か駄作かというのは別の問題。

この「第2番」も、同じレーベル&演奏者で同時に出た「第3番」も
実に名作である。
ここまで「反省」したにも関わらず、結局彼は冷遇されたままに終わる。
しかし、私見ではショスタコやプロコフィエフと同列に扱われて良いのでは
と思えるこの人のリベンジはこれからだ。
是非「第6番」までの残り3曲の交響曲も耳にしてみたいと熱望する。  

「ソ連系交響曲」侮りがたし!  

※ちなみにこの「ノーザンフラワーズ」というロシアのレーベル、
昨年この盤を含めた第2次大戦中のソ連産交響曲のCDを矢継ぎ早に発売し、
ソ連系ヲタクを狂喜乱舞させた。
今後も第2次大戦中にこだわらず、ソ連産交響曲の名作、
怪作をガンガン出して欲しい。

「第1番」のボッツタイン盤は、演奏が少し整然としすぎていて
「もう少しキレた感じが欲しい」とも思うが、
テラークというワールドワイドなレーベルからポポフの作品を出した功績は、
大いに賞賛に値する。

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