◎猫丸しりいず 第52回

◎猫丸しりいず 第52回  

「南アフリカの音楽」 フェイガン:カロー交響曲 他    
ピーター・マーチバンク指揮 南アフリカ国営放送交響楽団
(海外MARCOPOLO 8223709) 
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巷はワールドカップで賑やかである。
サッカーには全く疎い私であるが、とりあえずネタとしてだけは便乗させてもらう。  
今回は開催地にちなみ「南アフリカの音楽」がテーマ。    
南アフリカと言えば、長年実施されていた悪名高きアパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃され、
ようやく国際社会に受け入れられるようになってから、まだ20年足らず。

犯罪発生率の異常な高さ等、まだまだ多くの問題を抱えているとは言え、
こうした国際的イヴェントが開かれるようにまでなった事には感慨を覚える。 

さて、「南アフリカのクラシック音楽」なんて存在するのか、
と訝る方も多いだろうが、それは立派に存在し、こうして実際に聴く事すら可能である。
一体どのような音楽を皆さんは想像されるだろうか。    

「アフリカとクラシック音楽」と言えば、エジプトとエチオピアを題材とした「アイーダ」とか、
フランスの作曲家が書いた、当時フランスが植民地としていた
アルジェリアやチュニジアなどの北アフリカの国々を題材とした作品等が頭に浮かぶ。

それらのような、エキゾティシズム(あくまでもヨーロッパ人の視点によるものだけど)に
満ちた楽曲を想像して聴くと、ある種「肩透かし」を喰うかもしれない。    
この盤には、40分弱に及ぶフェイガン(1904~1980)の力作「カロー交響曲」をはじめ、
南アフリカ産の曲が何曲か収録されているが、
それらを聴いてヨーロッパのある国の作曲家たちの作品に非常に近いものを感じた。    

その国はどこか。 

ズバリ「イギリス」である。 
   
そもそもこの国の白人支配の基礎を作ったのは、
東インド会社がらみのオランダ人だが、18世紀末にダイヤモンドや金を狙って渡来し、
その後長年に渡ってこの国を支配したのはイギリス。
その歴史を考えれば、必然的な事にも思える。 

実際、フェイガンも南アから一度イギリスに渡り、
映画音楽等で活躍した後、南アに戻った「出戻り組」との事。    
そのフェイガンの作品をはじめ、収録されたどの曲も実にオーソドックスで聴きやすい。

反面、例えばヴィラローボス、ヒナステラ、レブエルタス等の
南米の作曲家たちのような強烈な個性は全く感じられない。
そこを「物足りない」と感ずる人も、当然いるだろう。
あまりに少ないサンプル数で南アフリカの音楽の全体像を語る事は出来ないとは言え、
ここまで「土俗&異国趣味」的な要素の無いノーブルな曲ばかり並んでしまうと、
私としてはある種の「違和感」を覚える。  

この盤に収められた作品は、
全てまだこの国がアパルトヘイトの渦中にあった時代のもの。
当時のこの国の白人たちは、有色人種たちを排除し、
アフリカの大地や自然や資源を「利用」する事はあっても真の意味で「融合」する事無く、
ひたすら自分たちだけの「小さなヨーロッパ」を作る事だけに腐心していたのではないか。

そして、これらの作品に「アフリカの大地の香り」みたいなものが微塵も感じられないのは、
そうした彼らの潜在的な意識がもたらした結果のように思えるのは、
私の勘ぐり過ぎであれば良いのだが・・・  

作品としては心安らかに聴ける優れたものが多いだけに、
余計複雑な気持ちになる。
今回の一大イヴェントの開催で世界中の注目を浴びる事によって、
南アが真の意味で豊かな国家になり、
「新時代の南アフリカのクラシック音楽」が生まれ出る事を願いたい。

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