猫丸しりいず 第53回

●猫丸しりいず 第53回  

◎マスネ:歌劇「ル・シッド」~バレエ音楽、
組曲第4番「絵のような風景」他(蘭EMI 5758712)  
ルイ・フレモー指揮 バーミンガム市交響楽団     

◎イベール:ディヴェルティメント、海の交響曲、バッカナール 他
(海外EMI 5176392 2枚組)  

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 今回は、私の敬愛してやまないフランスの名指揮者、ルイ・フレモーがテーマ。
  
フレモー(1921~)と私の「お付き合い」は随分長い。もう30年以上前からだ。
「限られた予算で、多くの曲を聴きたい」と思う、貧乏中高生の私にとって、
強い味方だったのが廉価盤LP。
当時、フランス音楽のスタンダードなレパートリーの廉価盤として
多く出回っていたのが、彼がバーミンガム市交響楽団を指揮したEMI盤だった。  

私が彼のLPを入手したキッカケは、
別にフレモーという指揮者に関心があったからでは無くて、
単に「安かったから」にすぎない。
ただ、結果的に、サンサーンスの「交響曲第3番」も、
フォーレの「レクイエム」も、オッフェンバックの序曲も、
私はフレモー&バーミンガムの演奏で初めて知ったのである。  

でも、今思えばその選択はこれまた結果的に間違っていなかった。
それらの演奏はどれもなかなか素晴らしかったのだ。  
その後サイモン・ラトルがバーミンガムに着任し、
このオケが世界的に有名になった時に、
「バーミンガム市響は、ラトル着任前は無名の地方都市オケだった」
みたいな論調があちこちで見られた。
これには私もアタマにきてしまい、  

「お前、それは無いだろう」 (注・志村けん風に)

と叫びたくなった事が多々ある。  
確かにこのオケが世界的にメジャーな存在になったのは、
ラトルの功績ではあろうが、その名声の基礎を築いたのは間違いなくフレモーである。  
しかし、初出からそれ程経年していない1980年代に既に廉価盤になっていた事が
象徴しているように、この名コンビはEMIの中でも「冷遇」されていた。

それもある程度は止むを得まい。
何しろ、1960~1980年代のEMIのフランス音楽録音と言えば、
クリュイタンス、マルティノン、ミュンシュ、デルヴォー、プラッソン等々の
「横綱・大関級」の大物がひしめいていた時代である。
フレモーにとっては実に「不運」な環境であった。

その状況はCD時代になっても変わらず、
ずっとフレモー&バーミンガムの録音は「日蔭者」的存在であった。  

そんな中、「やっぱりこのコンビ、素晴らしい」と思わせる録音が復刻された。
それが今回ご紹介の「イベール作品集」。
EMIの「ジェミニ」という、作曲家別作品集の2枚組廉価盤シリーズの一環として出たもので、
全体の約半分(5曲)が、このコンビの演奏である。  

彼らの演奏、まるで「アイロンのビシッとかかったお洒落なシャツ」という感じである。
実に明晰で、曖昧な部分が無いにも関わらず、
「小粋」な味わいにも全く欠けていないのだ。
同じEMIのフランスの指揮者、オケの組み合わせによる「放し飼い」というか、
独特の「ユルイ」味わいに満ちた蠱惑的な名演とは
全く異なる存在意義を放っているのである。  

特にたまげたのが「バッカナール」。
私はこの曲を「駄作」と決めつけていたのだが、

この演奏を聴いて驚愕。実は「名曲」だったのか、
と曲への認識が正反対に変わってしまった。
曲を生かすも殺すも演奏次第、という事を改めて思い知らされた事例である。
以前私はこの曲をNAXOS盤(ラムルー管)で聴いていたのだが、
その演奏はただ全部のパートを元気良く鳴らしているだけで、
曲のフォルムが全然つかめなかった。

しかし、フレモーの演奏は、響きが野放図にならず、
実にキッチリとコントロールされている。これぞプロの仕事。
こう言っては悪いが、演奏の「格」が全く違っていたのだ。
  
そんな彼らの美質を味わえるもう一枚が、マスネの作品を収めた盤。
マスネの曲と言えば、オペラファン以外には
「タイスの瞑想曲」位しかマトモに聴かれていない気がする。

しかし、7曲あるオーケストラのための「組曲」をはじめ、
実はマスネの管弦楽作品は傑作揃い。
ビゼー、グノー等々のフランス近代の作品がお好きな方には特に聴いて頂きたい。
中でも実にコケティッシュでチャーミングな「ル・シッド」のバレエ音楽は、
私の中ではトーマの歌劇「ミニョン」序曲と並び「彼女にしたい(笑)クラシック名曲」
の筆頭である。「明晰かつ小粋」というフレモー&バーミンガムの持ち味が、
ここでも充分に生きている。  

実現は難しいだろうが、現在入手困難な音源が多い
この名コンビの録音を集大成したBOXセットは出ないだろうか・・・  

アビーロードスタジオを売却しようなんて言ってた位だから、
そんな余裕ないですよね。どうでしょう? EMIさん・・・


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