猫丸しりいず第55回

★猫丸しりいず第55回  

◎ジュリアス・カッチェンの芸術④ 
グリーグ:ピアノ協奏曲 他 カッチェン(P) 
イシュトヴァン・ケルテス指揮 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団 他
(独DECCA 460831-2)  

◎ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー 他 カッチェン(P) 
マントヴァーニ管弦楽団(独DECCA 475615-9)  

03.JPG












以前にもこの連載で述べた事があったが、
私が物心ついて初めて聴いたクラシック音楽のレコードの一つが、
夭折の名ピアニスト、ジュリアス・カッチェン(1926~1969)が弾き、
名匠アナトール・フィストゥラーリが指揮した、
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の古いモノラルLPであった。  

うねるように熱く歌うオーケストラをバックに、
まさに「光彩陸離」という感じで煌くピアノの妙技・・・。  
当時、もちろん曲目や演奏者に関する知識など皆無の、
ただの新宿区百人町在住の一小学生にすぎなかった私にすら、
このレコードが「名曲の名演奏」だと言う事が瞬時に確信出来る位、
この演奏は素晴らしかった。  

その後、クラシックを本格的に聴き始めた中学生の頃、
当然気になったのが
「あのカッチェンというピアニストの新しい録音って出ているのだろうか。
聴いてみたい・・」という事であった。
しかし・・・・  

その時既に、彼はこの世の人ではなかったのだ。
1969年に、わずか42歳という若さで、肺癌のために亡くなっていた。

「そうだったのか・・・」 

それを知った時のガッカリした気持ちは、
30年経った今でも忘れる事が出来ない。
しかも当時、カッチェンは(アメリカ出身という経歴も手伝ってか?)、
日本では全く人気が無かったようで、
容易に入手可能な録音がほとんど無い・・・という有様であった。  

そんな経緯もあったので、DECCAから「カッチェンの芸術」が発売された時は、
まさに狂喜乱舞であった(ただ、残念ながら現在は廃盤のようである)。
中でも一番鮮烈な印象を残すのが、この第4巻。
「展覧会の絵」や「イスラメイ」の超絶的妙技も良いが、何と言ってもケルテスとの
グリーグが最高である。  
奇しくも「夭折の天才競演」となってしまったこの録音、
ハッキリ言って完成度は低い。
しかし、録音当時30歳代だった二人が、
それぞれの「才能のほとばしり」をストレートにぶつけた様なこの演奏は、
他に代えがたい魅力を放っている。

最近の若い演奏家が、最初から何かこじんまりと「完成」されてしまっていて、
あまり面白く感じられないのは、こういう「若気の至り」みたいな演奏を
しなくなってしまったからではないか?
(ちなみに1962年録音。担当はジョン・カルショウとゴードン・パリーという
当時のDECCA最強のコンビであり、カッチェンへの期待の高さが窺える)。  

もう1枚は、カッチェンが何とムード・ミュージックの巨匠、
マントヴァーニと競演したガーシュウィン。この異色の顔合わせと、
オリジナルLPのデザインを再現した素晴らしいジャケット(紙ジャケである)に惹かれて入手。
これがまた凄い。   カッチェンの唖然とさせる妙技も素晴らしいが、
これらの名曲に関しても頑として「マントヴァーニ流」を崩さないオケにも大拍手だ。
「ラプソディ・イン・ブルー」にも平気で
名物「カスケード・ストリングス」を入れてしまう荒ワザには、
「マントヴァーニさん、そこまでやっちゃいますか・・・」と苦笑してしまうが・・
(こちらは1955年のモノ録音。しかし、素晴らしい音!)  

思うに、リチャード・クレーダーマン辺りを最後に、
この手の「ムード・ミュージック」「イージー・リスニング」というジャンルが
「絶滅危惧種」になってしまった事を思えば、
このジャンルの全盛時を偲ばせるアイテムとしても貴重な一枚であろう。

ちなみにマントヴァーニは、他にもDECCAにクラシックの録音を遺しており、
「オペレッタ・メモリーズ」というアルバムが最近まで入手可能だったのだが、
その中に入っているヨゼフ・シュトラウスの「天体の音楽」が、
まるでマントヴァーニのオリジナルかと思える程素晴らしく、
「音楽家」としてのこの人の底力を再認識させる。  

皆がまだ「未来」を信ずる事が出来た、
古き良き時代・・・・
こんな感慨に耽るのは、自分が「おぢさん」になった証拠か・・・  

ではまた次回。    

 
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