猫丸しりいず第58回

★猫丸しりいず第58回

◎メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」 
ブルーノ・マデルナ指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
(蘭RCO RCO05001 10枚組BOX)    

◎バルトーク:中国の不思議な役人(組曲)・舞踏組曲 他 
ブルーノ・マデルナ指揮 
モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団(伊AGES 509009-2)  
 
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「大作曲家かつ名指揮者」と言えば、古くはマーラーやリヒャルト・シュトラウス、
20世紀後半以降ならブーレーズあたりが即座に名前が出てくる存在だろう。  

しかし、20世紀を代表する作曲家の一人として知られてはいるものの、
生前は売れっ子指揮者でもあった事をほとんど忘却されてしまった可哀想な人もいる。

それはイタリアはヴェネチア出身のブルーノ・マデルナ(1920~1973)。    
「指揮者マデルナ」がなぜ忘れ去られてしまったかと言えば、
ブーレーズのように有名楽団に指揮者としてのポストを持っていたわけでも、
メジャーレーベルに継続的・大量に録音していたわけでも無く、
加えて60にもならないうちに早逝してしまった等々の理由があるだろう。

しかし、彼は生前は古典から、自作を含めた現代作品までをレパートリーとし、
あちこちのオケから引っ張り凧の人気指揮者でもあったのだ。    
彼の演奏には、一般的な意味での「名演」と言えるかは微妙だが、
一度聴いたら忘れられない強烈なインパクトを持つものが多い。  

まずはバルトーク。
かつて「コンサートホール」レーベルから出ていた音源である(1969年録音)。
オケの響きが非常に軽い上、アンサンブルが激甘なので、
実に重心の高い不安定な演奏になっている。
オマケに「中国の不思議な役人」ではアッと驚くテンポ設定が随所にあるもんで、
特に終曲ではオケがついていけず、空中分解寸前のスリリング&大混乱な展開。
これが「不道徳でB級ホラー」的なこの曲の内容に妙に合っていて、
忘れがたい印象を残す演奏となっているのだ。    

次の「スコットランド」は、1965年にACOに客演した際のライヴ。
このBOXセットは、この連載の第44回の「未完成」の回でもご登場頂いたが、
マデルナはこの楽団によく客演していたようで、
他にもベルク、ウェーベルン、ヴァレーズ、ルトスワフスキの作品を指揮した音源が
このBOXには収録されている。それらも実に良い。

しかし、この「スコットランド」には、まさに震撼させられた。    
第1楽章の序奏が終わって、第1主題が始まる。

と、ここで仰天。
実にテンポが遅い。

そしてどんどん音量が小さくなっていき、まるで旋律が消え入りそうなのだ。
幽霊が出て来そうな独特の雰囲気に「一体この先どうなるのか?」と
固唾を飲んで聴き入っていると、
曲が高揚するにつれテンポ、音量が急激にヒートアップ。
仕舞には怒りを叩きつけるような猛烈な熱さに。
この第1主題の提示部だけで、「これは只事では無い」と私は参ってしまった。    
この後も、曲が終わるまでテンポや表情の激変や大きな振幅が随所にあり、
ところどころオケのアンサンブルが乱れるところすらある。
そして終楽章の、まさに嵐のような主部が終わった後のコーダの部分。
ここが実に雄大で素晴らしく、
まるで「波乱万丈の一代記」みたいなこの演奏を見事に締めくくるのだ。
指揮者の「過激」な要求に必死に喰らい付いて名演を成し遂げたオケも凄い。
コーダの最後の和音がまだ鳴っている内から、感動した聴衆が大拍手・大喝采を始めてしまう・・・という、 ACOのライヴとしては非常に珍しい場面もそのまま収められていて、これまた非常に印象的だ。    

指揮者としてのポジショニングはブーレーズと非常に似ているマデルナだが、
その指揮ぶりは、理知的でクール、ポーカーフェイスな
印象の強いブーレーズのそれとは、あらゆる意味で対照的だ。    

マデルナは「整合性なんて糞喰らえ」みたいな感じで、
とにかく「自分の表現したいように」演奏する。結果、アンサンブルが多少乱れようが、
音が混濁しようがお構いなしという局面も少なからずあり、
キッチリ整理整頓された演奏など最初から目指していないようだ。
だから「万人向け」の名演とは言い難いが、ツボにハマるとその指揮はとんでもない魔力を放つ。
その典型が「スコットランド」。この演奏を聴いた後しばらくは、
他の演奏を聴く気が全く失せてしまう程の強烈なインパクトを私に与えた演奏である。  

残念ながら、現在入手できる指揮者としてのマデルナの音源は非常に限られている。
せめてあと10年生きていてくれたら、作曲家としても指揮者としても、
また新しい境地を見せてくれたのではないか。その事も残念としか言いようがない。
このまま忘れ去られるには余りに惜しいこの人の芸。
何とか多くの音源が再び日の目を見る事を期待したい。    

偉大なり!

「指揮者マデルナ」!


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