猫丸しりいず第59回

猫丸しりいず第59回  
シューベルト:交響曲第9番「ザ・グレイト」    
ハインツ・レーグナー指揮 ベルリン放送交響楽団 
(国内DENON COCO70879)  
011.JPG











シューベルトの「交響曲ハ長調D.944」。  
「ザ・グレイト」という愛称で親しまれているこの曲を、
皆さんは「交響曲第何番」とお呼びだろうか?  

私は冒頭のタイトル通りだが、この曲を最初に「第9番」と覚えたので、
これ迄も、恐らくこれからも「第9番」と呼び続けるだろう。
しかし現在、この「D.944」には他に「第7番」「第8番」というナンバリングも混在し、
非常に混乱している。  

どうしてこんなヤヤコシイ事になってしまったのか。  

最初の6曲の交響曲を「仲間内の演奏会」用に書いたシューベルトが、
「公開演奏会用の本格的な交響曲を作りたい」という野心に燃えて、
何度もチャレンジしたものの多くの挫折を味わい、
結果未完の断片がゴロゴロ残った・・・という話は、
この連載で以前(第44回)「未完成交響曲」をネタにした際にもとりあげた通り。  

結局、「6番」以降の交響曲で、キチンと完成され、
現存を確認されているものは「D.944」のみ。
だから普通に考えればこの曲は「7番」でキマリの筈。
混乱を招いたのは、本来ナンバリングの対象にすべきでない(と私は思う)曲に、
番号を付与してしまった事がそもそもの発端。  
その一つはご存じD.759「未完成交響曲」。

第3楽章にとりかかった所で中断&放置されてしまったこの曲、
あくまでも「未完の断章」な訳で、
本来他の7曲の交響曲と同列に扱える代物では無い。
しかし、これだけ破格の名作を、
「断章」だからと言って一人前に扱わないのは忍びない・・・
という心情は理解できる。
よってこの件は「情状酌量」の余地ありと見る。  
これに対し全く解せないのが、
曲全体が不完全な形でしか残っていない「D.729ホ長調」に、
かつて「第7番」という番号が与えられていた事。

ほぼ完成に近い形まで書かれていたとは言え、
補筆・修正をしなければ実際の演奏が出来ない曲に番号を振ってしまったのは
一体どういう事なのか。たとえ「尻切れトンボ」でも、
演奏可能な形で残された「D.759」とは、やはり同列には扱えないと思われる。
他の有名作曲家では、こういう例は思い当たらない。  

さすがにこの点に関しては、研究者の間でも「オカシイ」と思う人が多かったのか、
国際シューベルト協会が 1978年に見直しを行い、
D.729はナンバリングの対象から外される事になった。

これでスッキリ解決!の筈だったのが、
その際協会が「未完成=7番」「グレイト=8番」と、番号を一つ繰り上げてしまった事が、
余計に混乱に拍車をかける結果になった。
おかげで単に「第8番」と言った時に、
それが「未完成」を指すのか「グレイト」を指すのかわからない・・・という有様である。
CD等における曲目の表記の際も、
カッコ付きで両方の番号を併記するという苦肉の策をとっている場合が多く、
どうにもスッキリしない。  
まあ「学術的」には、番号の繰り上げが一番「正しい」方法、
である事はわからなくもないが、長く定着していた番号をわざわざ変えて、
混乱を巻き起こす必要があったのか私には疑問だ。
この連載で以前とりあげたモーツァルトの「37番」のケースで、
この番号を事実上の欠番とし、
38番以降の曲の番号をそのままにしたのは非常に合理的なやり方であり、
そういう方法はダメだったのか?と思う。

皆様はどうお思いか?  
「楽曲のナンバリング」に関しては、中々興味深い事柄も多いので、
改めてとりあげる機会を持ちたい。  
さて、「ザ・グレイト」という愛称は、勿論作曲者自身がつけたものでなく、
単に同じハ長調の「6番」と区別するために
「大きい方のハ長調」という意味合いでついたもののようだ
(6番「並盛り」9番「大盛り」という事か)。
でもこの「うた」に満ちた雄大な曲に「グレイト」の愛称は良く似合う。  

この曲の実に「グレイト」な演奏が、このレーグナー盤。
LPでの初出時、音質の良さを売り物にわざわざ1楽章当たり
1面の2枚組で出ていた記憶がある。
この演奏、ゆったりしたテンポ設定で実に恰幅の良い名演奏。

特に第1楽章の終結部で思い切り急ブレーキをかけ、
超スローテンポで堂々と結ぶところなど、
思わず「イヨッ!横綱!」と声を掛けたくなる程だ。

いささかオールドファッションではあるが、
安心して浸りきれる名演である。  


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