猫丸しりいず第63回

●猫丸しりいず第63回
 
◎ムソルグスキー:交響詩「禿山の一夜」
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団
(国内EASTWORLD/CE33-5396 旧規格)
10.20.JPG
ムソルグスキー(1839~1881)って、かなり「特殊」な作曲家だと思う。
 
ロシアの作曲家としては、チャイコフスキーに匹敵する知名度を持ちながら、知られている作品の数は少なく、
本人が書いたとおりの「オリジナル」な形で知られている作品は更に少ない。
 
「大作曲家」と呼ばれる人で、こういうケースは他にあまり無いのではないか。
 
「展覧会の絵」にしても、ラヴェルを筆頭とする管弦楽編曲版に比べて、オリジナルのピアノ曲は日陰の存在に甘んじているし
(下手をすると原曲がピアノ曲である事自体知られていなかったりする)、「ボリス・ゴドゥノフ」だって、オリジナルの形で上演される事は
本当に少ない。
 
「代表作」と言われる、「禿山の一夜」も事情は同じである。
 
この曲は、私が初めて聴いたクラシック音楽の一つで、それゆえに愛着も深い。
子供の頃自宅にあったLPで初めて聴いたのだが、「展覧会の絵」とカップリングされた、名匠マルコム・サージェント指揮
ロンドン交響楽団の盤であった(エベレスト盤。今聴いても素晴らしい名演、名録音だ)。
ライナーノーツの内容は、当時まだ小学生だった私には少なからず難解だったが、おおよそこういう内容だというのは理解できた。
 
『ムソルグスキーは、この「禿山の一夜」に大きな自信とこだわりを持っていたのだが、
そのあまりにブッ飛んだ内容が周囲に全く理解されず、その後も様々な形でこの曲を世に出そうと奮闘するも
結局それを果たせないまま早死にした。今日親しまれているこの曲は、他の作曲家がムソルグスキーの死後に完成させたものである』
 
この曲が、作曲者の友人リムスキー・コルサコフ(以下RKと略)によって再構成、完成された版で今日親しまれている事は、
今更ご説明不要であろう。
 
この「RK版」、キッチリした構成、鮮やかな起承転結、見事なオーケストレーション、とまさに3拍子揃った
「さすがRK」と唸らせる出来栄えで、ロシア管弦楽曲の代表的人気曲として君臨しているのも頷ける。
ところが1970年代になると、この曲をムソルグスキーのオリジナル(に近い)形で演奏した録音がいくつか現れて来た。
 
お聴きになった事のある方はご存じだろうが、この「原典版」は、「RK版」とかなり相違がある。
もちろん共通する楽想は多いが、「原典版」は非常にワイルドで荒削り。構成もグチャグチャな感じだ。
これを聴くと、RKがいかにオリジナルの素材を上手く生かしながら聴きやすく、面白く構成し直したかがよく理解できる。
無論「原典版」にも独特の面白さは多々あるものの、もしこの形のままで「禿山」が世に出ていたとしたら、
この曲がここまで人口に膾炙した名曲となったかは、かなり疑わしい。
 
RK版に関しては、原作の素材をかなり自由に構成し直している事から、「これじゃホトンドRKの作品だ。
ムソルグスキーの作品と言えるのか?」という批判がある事も事実だ。
でも私は、ムソルグスキーは自分が生涯執念を持っていながら中途半端に埋没しかかっていた作品を見事に再生させた
友人のRKにひそかに感謝しているのではないか、またRKの側にも、この「規格外の天才」の作品を何とか日の当る場所に出したい・・
という強い想いがあったのではないか、と肯定的に考えている。
 
そう考えると、この「RK版」はムソルグスキーとRKという2人の天才の長所が見事に融合した傑作、という思いがますます強くなる。
 
さて「禿山の一夜」には実に多種多様な名演があるが、スタンダードな演奏の中で私が一番お気に入りなのは、このサヴァリッシュ盤。
多くの方にはノーマークの盤だろうが、ビシッと締まった指揮と、オケの重厚な音色がうまく噛み合った意外な名演である。
この演奏があまりに正統派すぎる・・・とお感じの方には、表現の振幅の大きさが実に面白いロストロポーヴィッチ&パリ管や、
一直線に突進!という感じのシルヴェストリ&ボーンマス響なんかもオススメ(おっと、みんなEMI盤だ)。
 
そして、この曲の「裏名盤」としてマニア間で有名なのが、レイボヴィッツ&ロイヤル・フィルのRCA盤である。
RK版のスコアにいろいろ手を加え、夜明けと共に退散した・・はずの悪魔が最後の最後に「フッフッフ、諸君、まだまだ甘いな」とばかりに、
怒濤の復活をとげてオシマイ、という爆笑ものの珍演。永らく廃盤で入手困難だったが、最近海外盤で復活したようだ。
「禿山」好きのアナタ、これを聴かないと損しますよ。
 
では今回はこれにて退散。

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