猫丸しりいず 第65回

猫丸しりいず第65回
 
シュニトケ:オラトリオ「長崎」、交響曲第0番

オーウェン・アーウェル・ヒューズ指揮 
ケープ・フィルハーモニー管弦楽団 他
(BIS CD1647)
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とにかく異常な暑さだった今年の夏。
 
日本の夏と切っても切り離せないのが、「戦争」と「原爆」である。
それにしても、原爆投下からもう65年もの歳月が流れてしまった。
今の子供たちが「原爆の話」を聞くことは、私が子供の頃に置き換えれば日露、日清戦争くらい「昔」の話を聞いている・・・
という事になるわけで、年月の流れを実感せずには居られない。
 
ところで私が昔から「なぜ?」と思う事がある。
それは「原爆」に関して、事柄の重さは全く同じ筈なのに「広島」に比べて「長崎」が全く過小な扱いに終始している(と思われる)事。
まるで「長崎」は「広島」のオマケ扱いではないか。何か釈然としない。
 
音楽に関しても、「ヒロシマ」の惨禍を題材とした作品は、芥川也寸志、大木正夫、團伊玖磨、ペンデレツキ等々少なくない数の
作品があるが、「ナガサキ」に関してはまるで見当たらない。
 
と、思っていたら、意外な人の手によって「ナガサキ」を素材とした作品が残されていた。
今回はその作品、アルフレット・シュニトケ(1934~1998)の「長崎」をとりあげる。
 
ショスタコーヴィッチ以降のソ連・ロシア圏における最も有名な作曲家であるシュニトケについて、細かい説明は不要だろう。
ただ、彼の主要作品が1980年代以降の作品に集中しているのに対し、この「長崎」はまだ彼がモスクワ音楽院の学生であった
1958年の作品。シュニトケの作品と言うと、シニカルで晦渋という印象が強いのだが、この曲は実に「ソ連的わかりやすさ」に満ち、
「この人も若い時はこんな作品書いてたのか」と思わせる。
 
大編成のオーケストラと合唱、メゾソプラノ独唱のための40分ほどの作品で、原爆をテーマとした島崎藤村、米田栄作らの詩の
ロシア語訳がテキストとなっている。
全部で5つの部分からなり、第3楽章では様々な技法を駆使して原爆投下時の惨状を描写。ここが全曲のヤマ場と言って良いだろう。
 
ただ、最後に「をいをい」と突っ込みを入れたくなるのが終曲の第5楽章のエンディング。
「森の歌」や「アレクサンドル・ネフスキー」のような・・・と言えば、わかって頂ける方も多いと思うが、
これら「ソ連系オラトリオ」のお約束と言うべき、妙に前向き&健康的なフィナーレとなっていて、そこまでの曲調との乖離が大きく、
なんかチグハグな感じなのだ。「人民がムリヤリ白い歯をむき出して笑ってるプロパガンダ・ポスター」という感じ。
この辺は当時のソ連の作曲家たちの置かれた状況を考えれば、やむを得ない事だったのかも知れないが・・・・
 
とは言え、単なる「珍曲」ではなく、なかなか「名曲」と言える出来の作品なので、ソ連音楽に関心のある方にはご一聴をおススメする。
 
カップリングは「交響曲第0番」。
「第0番」と言えば以前この「猫丸」でブルックナーの「0番」をとりあげたが、あのケースと異なり、こちらの「0番」は「長崎」と同様に
音楽院在籍時の習作として作曲された作品との事。
ライナーノーツにも触れられているが、この曲、(ショスタコーヴィッチ+ミャスコフスキー)÷2という感じ。
実に聴きやすく、わかりやすい作品で、これまたなかなか名曲と言える。無論、後の彼の作品群と同列に論ずるには微妙な部分はあるが、
ソ連系交響曲の系譜に連なる作品の一つとして聴くならば、充分に楽しめる作品だ。
 
そして、この盤で演奏しているのは珍しくも南アフリカ、ケープタウンのオケと合唱団。
南アフリカの音楽に関しても、以前この連載でテーマにした事があったので、私はこの点でも非常に興味津々で聴いたのだが、
非常に水準の高い演奏で驚かされる。
是非BISにはこのオケを起用して南アフリカの楽曲の録音に挑んでほしい・・・と思う。
 
今回はここまで・・・

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