猫丸しりいず第66回

●猫丸しりいず第66回
 
◎マルケヴィッチ:イカロスの飛翔
 
クリストファー・リンドン=ギー指揮 アルンヘム・フィルハーモニー管弦楽団
(NAXOS 8572153)
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突然ですが、クイズです。
 
ジネット・ヌヴー、グィド・カンテッリ、ウィリアム・カぺル、ジャック・ティボー。
 この4人の往年の名演奏家の共通点は??
 
問題がちょっと易しすぎたか?
そう、この4人は全て航空機事故で命を落とした人々である。
 
私は乗り物ヲタク&旅好きであるがゆえ、必然的に飛行機には頻繁に乗るのだが、
その度にしみじみ感ずるのが、現代の旅客機が如何に安全な乗り物であるか、という事。
 
旅客機自体も、そしてその運航をコントロールする地上の設備も、この上無くハイテク化されて、
二重、三重にも事故発生を防ぐセーフティネットが張られているのに加え、まさに「プロの技」としか言い様のないパイロット達の技術。
大雨や強風、着陸寸前まで滑走路が見えない程の濃霧等々、非常にハードな条件下での着陸を何度も経験したが、
そんな悪条件下でもキッチリ仕事をこなすパイロットの技術には、超絶技巧を披露するピアニストの演奏に接した時のような
「人間の力ってスゴイ!」という感慨すら持ってしまう。
 
これまでに一番印象に残っているのが、鹿児島の奄美群島の喜界島から奄美大島へ向かう便に搭乗した時の事。
乗ったのはスウェーデン製のサーブ340という国内定期便最小クラス(36人乗り)のプロペラ機。
天候はもうちょっとで欠航と思われる程の激しい雨。
 
奄美大島空港への最終着陸態勢に入り、機体左側後方の眼下に滑走路が見えた。
「エッ!これからあそこまで降りていくのか」
 
現在位置から滑走路に到達するには、この大雨と海面から吹き上げる強風という厳しすぎる条件下、
ほとんどUターンに近い左急旋回をしながら着陸しなければならない。「これは見ものだ・・」。乗り物マニアの血が騒ぐ。
そして機体は悪条件を物ともせず、見事着陸に成功!
着陸の瞬間、私は思わず心の中で「イヨッ、名人芸!日本一!」と、機長に大喝采を送った程のスリリングな体験であった。
 
もちろん今でも稀にだが死亡事故は起こる。しかし、例えば自動車絡みの事故に巻き込まれる確率と比べれば、
まったく問題にならない位の危険度だ。だから現在では、根本的に飛行機が苦手・・・という方を除けば、
旅客機を利用する際に「身の危険」みたいなものを感ずる方はほとんどいらっしゃらないのではないだろうか。
 
それに比べると、冒頭の4人の名演奏家が不幸にも事故に遭遇した1940~50年代前半は、まだ民間航空輸送が本格化した初期の頃で、
安全運航に関する技術も現代とは比較にならない位「原始的」であった。ゆえに事故も多く、「飛行機による移動」は
それなりのリスクが伴うものであったが、それでも便利な乗り物が出来ればスター演奏家が広範囲の移動を強いられるのは、今も昔も同じ。
 
その点、この4人はある意味実に「不運な時代」に生きたとも言える。
「クラシック演奏史」と「科学技術」という、一見無関係に思える事象が微妙に繋がっているのは奇妙だが、
とにかく今後はこの4人のような不運な演奏家が出ないよう、切に願いたい。
 
さて、「元祖墜落事故」といえば、ギリシャ神話のイカロス。
鳥の羽を蝋で固めた翼で空を飛んだイカロスは、「あまり高く飛ばないように」という、父ダイダロスの警告を忘れ、
太陽に近づきすぎたために蝋が溶けて海に墜落し、命を落とす・・・・というストーリーはご存じの方も多いだろう。
 
それを題材にした作品「イカロスの飛翔」を作曲したのは、20世紀を代表する鬼才指揮者として知られ、
私も大いに尊敬するイーゴリ・マルケヴィッチ(1912~1983)その人である。
 
この大指揮者、若い頃は新進作曲家として注目され、この曲も1933年の初演時には大センセーションを巻き起こしたらしい。
なかなか面白い作品なのだが、中でも私が「スゴイ!」と感ずるのが、イカロスの飛行~墜落~死という場面を描いた部分。
 
そもそも「飛んでいる状態」を音楽で描写する事は非常に難しいと思われる。しかし、この曲のハイライト「飛翔」の場面を聴くと、
「あ~飛んでる、飛んでますよコレ」という感じがするのだ。ガムラン風の怪しい音階と、重心の高い独特のオーケストレーションで、
いかにも「飛んでます感」を見事に描出したマルケヴィッチの凄腕には感服してしまうと共に、この天才が30歳そこそこで
作曲の筆を折ってしまった事が実に惜しまれる。
 
ちなみにこの盤は、NAXOSから出ているマルケヴィッチ作品集の中の一枚。
かつてマルコポーロ・レーベルから出ていたもののリイシューで、この天才の作品がいろいろ聴ける有難いシリーズ。
独創的かつ1930年代という時代の匂いを強烈に放つ作品群は一聴の価値大いにあり!

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