猫丸しりいず第70回

●猫丸しりいず第70回
 
◎ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲(1971年録音盤)
(国内DG UCCG3827~8)
 
◎ポンキエルリ:歌劇「ジョコンダ」~時の踊り
(国内DG UCCG5033)
 
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
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全く早いもので、当「猫丸しりいず」も本年最後の回となった。
今年の「大トリ」は皆様お馴染みの超大物にご登場頂く。
 
それはご存じ「帝王」カラヤン(1908~1989)。
 
古今東西の指揮者の中で、カラヤンほど毀誉褒貶かまびすしい人も他に見当たらない。
私自身はと言えば、もし「カラヤンを好きか嫌いか」と問われたら、「あまり好きじゃない」と正直に答えざるを得ないが、
「カラヤンを尊敬するか否か」と問われたら、これには「大いに尊敬している」と即答出来そうだ。
 
この人の凄い所は、私のような「アンチ・カラヤン派」の人間にさえ、「この曲は絶対カラヤンでなければダメ」と思わせる名演を
成し遂げている点にある。それも重厚長大型の曲目では無く、軽く扱われがちなポピュラーな小品にそれを感じさせるのも凄い。
中でも極めつけなのが、冒頭に掲げた2曲。
 
1971年録音の「ウィリアム・テル」。
最初のチェロの表情から、まさに「入念」としか言い様のない見事さ。
そして続く「嵐」の部分で、重戦車のようなベルリン・フィルのド迫力が炸裂!トロンボーンやティンパニの猛烈な強打強奏には思わず手に汗握る。
そして木管の響きが余りに美しい「静けさ」の部分。爽快&痛快そのものの「スイス軍の行進」。まさに「完璧」の一言。
この曲を「あたかも小さな交響曲のようだ」と絶賛したベルリオーズの言葉が心底頷ける凄演で、
これを聴いてしまうと他の演奏が薄味に感じられて聴く気がしなくなる程だ。
 
「時の踊り」は、華やかなコーダも良いが、中間部のゆったりした部分がカラヤンの真骨頂。
コーダに移る直前の、磨き抜かれた弦の旋律にはシビレてしまう程。「カラヤンさん、その手には乗りませんよ」と思って聴いていても、
最後には「参りました」とあえなく撃沈されてしまうのだ。ちなみに1970年録音。
 
私がカラヤン&ベルリン・フィルの膨大な録音の中で、好き嫌いを超越した凄味を感ずるものには一つの共通点がある。
それはそのほぼ全てが1970年代前半の録音である事だ。事実この頃を両者の全盛期と見る人は多いようだし、クーべリックの「新世界」とか
ヨッフム&ギレリスのブラームスのピアノ協奏曲(いずれも1972 年録音)など、カラヤン以外の指揮者によるベルリン・フィルの名演盤もこの時期には誕生している。
 
例えば、あの「新ウィーン楽派管弦楽曲集」(DG)や、いずれもEMIに録音したワーグナーの管弦楽曲集、「英雄の生涯」、
バルトークの「管弦楽のための協奏曲」などなど・・・。
これら1970年代前半の録音は、オケ、指揮者双方に「ヤル気」がビンビン感じられ、「ここまでやっちゃいますか」と呟きたくなるような
有無を言わさぬ説得力を持っている。
 
それに比べて、これ以前の1950~60年代初頭の録音は、颯爽とした良さはあるが、カラヤン臭がまだまだ薄いし、
1960年後半はオケの精度がイマイチ(特に金管のピッチが非常に甘い)で、聴いていてかなり気になる。
逆に1970年代も終わり頃になると、両者の関係に微妙な「マンネリ化」が感じられ、凄味が薄れているように感じられる。
まあ、この辺の事は聴き手の好みの問題も大いにあるので、「俺は脂ッ気の抜けた80年代のカラヤンが好きだ」という方がいても
何の不思議も無いのであるが。
 
没後20年以上経っても、忘れ去られるどころかますます存在感を増しているように思われるカラヤン、サスガである。
カラヤン亡き後のベルリン・フィルが、どうも「薄味」になったように思えて物足りない・・・と感ずる私などは、
今頃になってカラヤンの凄さを再認識している程だ。生前はそのあまりに華やかな活動ぶりが、かえって「色眼鏡」で見られがちであった
(第68回でテーマにした晩年のベームの異常な人気は、「カラヤン的な存在」に対するアンチテーゼと言える気がする)ような気がするのだが、
ここらで一度、虚心坦懐にカラヤンの演奏を聴き直してみては如何だろうか?
新たな発見があるかも・・・・
 
さて、今年も途中での挫折?も、ネタ切れも無く、どうやら「猫丸」を締めくくる事が出来そうだ。
毎度小生のしょうもない駄文にお付き合い頂いている皆様のお陰でございます。
来たる2011年も、引き続き「新宿クラシック館」と、当ブログ、そして「猫丸しりいず」に変わらぬご愛顧をよろしくお願い申し上げます。

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