猫丸しりいず第72回


◎コールリッジ=テイラー:ヴァイオリン協奏曲
 マーウッド(Vn) マーティン・ブラビンス指揮 BBCスコットランド交響楽団
(英HYPERION CDA67420)
 
◎コールリッジ=テイラー:ハイアワサの婚礼の宴、バンブーラ 他
 サー・マルコム・サージェント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 他
(英EMI 5870242)
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 サミュエル・コールリッジ=テイラー(1875~1912)というイギリスの作曲家をご存じの方は、
珍曲マニアか、相当ディープなイギリス音楽ファン位ではなかろうか。
 このあまりに魅力的な作曲家の作品を、少しでも世に広めたいと「コールリッジ=テイラー東京事務所」を勝手に自認する私は思い、
この「猫丸」に登場させる事とした。
 
 ラヴェルと同い年のこの作曲家、西アフリカのシエラレオネ出身の黒人ドクターとイギリス人女性の間に生まれた、黒人系作曲家のパイオニアと言える人。
その風貌は何となくオバマ米大統領を連想させる。
 
ロンドンの王立音大に在学中から作品を発表してエルガーに認められ、イギリスだけでなく何度かアメリカにも渡って指揮者としても活動。
そのアメリカでの黒人アーティストとの交流や、黒人音楽との出会いが、彼の「黒人としてのアイデンティティ」を目覚めさせ、
その「イギリス風ドヴォルザーク」という感じの魅力溢れる作品群を生み出す原動力となった。
 
この人の作品の中で「最初の1曲」としておススメするのに最適、と思われるのがヴァイオリン協奏曲。
冒頭のオーケストラによる雄大なテーマで、まずグッと惹きつけられる。ほの暗くも暖かい、郷愁を誘うその旋律とその後の曲の展開は、
まさにドヴォルザークの晩年の黒人霊歌に影響を受けた「新世界交響曲」などの作品を連想させる。
しかし、ドヴォルザークの作品の「ボヘミアの土臭さ」の代わりに、英国風のジェントルな香りが漂うのがこの曲の大きな特色であり、魅力だ。
エルガーのヴァイオリン協奏曲にちょっと通じる部分もある。
 
決して超絶技巧をひけらかすための曲では無いだけに、曲に対する共感と歌心が不可欠な曲だが、その点このハイぺリオン盤の演奏は実に良い。
ソリストのマーウッドも好演だが、それ以上にオーケストラの渋い響きがこの「隠れ名曲」の滋味を充分に引き出している。
 
ちなみにこの盤、カップリングされた英国の作曲家アーサー・サマヴェルのヴァイオリン協奏曲も、なかなかの佳作でお買い得。
この手の秘曲の掘り起こしと商品化には多大な手間とコストが必要と思われるのだが、本当にこのハイぺリオンというレーベルには脱帽だ。
 
ヴァイオリン協奏曲が気に入った貴方なら、2枚目の盤、カンタータ「ハイアワサの婚礼の宴」等を収めた1枚には最初から最後までヤラレッぱなしであろう。
心優しく、でも根は力強く、前向きなその音楽は、ツライ事柄にくじけそうになった時「クヨクヨしないで頑張ろうよ。そのうちイイ事あるからさ」と語りかけて来るようだ。
「俺が俺が」みたいな押しつけがましさが無く、控えめでありながら、オーケストラ曲としてのメリハリ、魅力にも全く欠けていない。
コールリッジ=テイラーの作品を気に入った方なら、「これほどの佳曲を作った作曲家が、ドヴォルザークやフォスターが大きな人気を得ている日本で
どうして全くブレイクしないのだろうか」ときっと思われるのではないだろうか。
 
探せばまだまだある「隠れ名曲」「隠れ名演」。
今後も機会があればとりあげていきたい。

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