猫丸しりいず第73回

 ◎エルガー:威風堂々第1番、第2番、第4番
 
サー・ネヴィル・マリナー指揮 
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
(独PHILIPS 434159-2 /廃盤)
neko001338.jpg

 

私達が日常何気なく使っている、音楽に関する日本語の用語。
 
ただ、西洋音楽が「輸入品」である以上、最初に「輸入」された段階で、それらの日本語の用語を考案した人が必ずいた訳だ。
 
考えてみると、実にこの人たちは偉大である。シンフォニーを「交響曲」としたのは並のセンスではないし、
「狂詩曲」とか「奇想曲」に至っては、どうやったらこんな凄い訳語が考え出せたのか、ただただ敬服するばかりだ。
 
楽曲の曲名に関しても同じ事が言える。「魔弾の射手」なんて原題以上にキリリとした素晴らしいタイトルだと思うし、
「地獄のオルフェウス」じゃなくて、あえて「天国と地獄」という訳題にしてしまったのも唸らせる。

こういう訳題のセンスは、昔の人の方が遥かに優れていたようで、例えば「Gone With the Wind」を「風と共に去りぬ」なんて訳すのは
(コトバの環境の違いはあるとは言っても)現代人のセンスでは最早困難ではないだろうか。
(ついでだが、あのハンナ・バーベラの名作アニメ「Wacky Races」を「奇抜なレース」なんて直訳にしないで「チキチキマシン猛レース」という
突拍子も無いタイトルにした人もエライ!!)
 
そんな幾多の楽曲のタイトルの中で、「この訳は凄い!」と特に思わせるのが、ご存じエルガーの「威風堂々」。
原題の「Pomp and Circumstance」は、シェイクスピアの「オセロ」のセリフから採られたものだそうだが、このコトバは日本語に訳するのが非常に難しく、
昔私も辞書をひっくり返して日本語訳にチャレンジしてみたが、上手い日本語訳を全く思いつかなかった。
(ちなみに翻訳ソフトで実験?してみると「物々しい行列や儀式」という珍妙な訳になってしまった)。
 
これを「威風堂々」という訳題にした事は、かなり大胆な「超訳」なのは否めないが、私はひたすら
「この題名を生み出した人、凄すぎる」と感嘆するばかりだ。この格調高いタイトルじゃなかったら、この曲日本でここまでの人気曲になっただろうか。
 
さて、この「威風堂々」、第1番の人気があまりに突出していて、他の4曲の影が非常に薄いのが個人的には残念だ。私は(単なるヘソ曲がりなのかも知れないが)
むしろ第2番や第4番の方が好きである。特にイ短調の「第2番」は、その独特の悲劇的なヒロイズム漂う曲調が素晴らしくて、聴くたびに「名曲だなあ」と思ってしまう。
 
そして「威風堂々」の名演盤として昔から愛聴しているのが、このマリナー盤。
1977年の録音で、ジェントルなマリナーの指揮とオケの燻し銀の音色が見事に噛み合って、この上なく格調高い名演を聴かせる。
このコンビは同時に「エニグマ変奏曲」「惑星」も録音しているのだが、そのいずれもが素晴らしい。
特に「惑星」は鋭角的でド派手な演奏が溢れる中、「そうかこの曲ってイギリス音楽なんだな」と再認識させる品格の高い名演奏で、
レコードでの初出時に目から鱗が落ちる思いで聴いた事を思い出す。
 
現在この演奏、「惑星」「威風堂々」のカップリングで豪ELOQUENCEから復活していて
入手可能なのではあるが、どういう訳か「威風堂々」が1番、4番しか収録されておらず、「第2番」がカットされてしまっているのが何とも残念で不可解だ。
そうは言っても、PHILIPSレーベルが事実上DECCAに吸収されてしまい、この音源が今後DECCAからリイシューされる可能性が高いとは言えない今となっては
贅沢は言えない。興味のある方は今のうちに入手される事をおススメする。
この盤に限らず、名演ひしめく旧PHILIPSの音源の今後の運命が大いに気になる今日この頃である。
 
それではまた次回。

diskunion新宿classic  猫丸


 

Entrance







Classical Broadcasting for YouTube



Topics





About


 

diskunion Link








 

















Calendar

07 2017/08 09
S M T W T F S
1
12
13 15
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

Search

カウンター

Copyright © diskunion Shinjuku Classic-Kan All Rights Reserved