猫丸しりいず第74回

◎猫丸しりいず第74回

ヴェルディ:レクイエム
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団、ロバート・ショウ合唱団 他
(国内RCA BVCC9714)

スッペ:レクイエム
ミシェル・コルボ指揮 リスボン・グルベンキアン財団管弦楽団、合唱団 他
(英VIRGINCLASSICS 724354561429)
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ある意味で「レクイエム」ほど「面白い」楽曲は無い。

共通の素材を用いて、様々な作曲家が「本当にこの人らしい」と思わせるスタイルで多くの名作を生み出している「レクイエム」。

「怒りの日」一つをとってみても、ほとんど「音響実験」の如く猛烈なベルリオーズから、実にアッサリと通り過ぎてしまうフォーレまで実に多種多様。その作曲家の「作曲スタイル」や「どういうレクイエムを作りたいというコンセプト」の違いが顕著に見られ、この上無い面白さである。

そんな「レクイエム」の代表選手の一つがヴェルディの名作。
1874年に初演されたこの曲、それから2~3年の間にヨーロッパ各地で繰り返し演奏されて大反響と絶賛を巻き起こた。
ちょうど「アイーダ」と「オテロ」の間にはさまる時期に書かれた、まさにヴェルディ円熟期の傑作である。
ちなみにこの曲の初演から2~3年というのは、ブラームスの交響曲第1番や第2番が初演され、日本では「西南戦争」が起こって西郷隆盛が自決した、
ちょうどそういう時代である(以前この連載でもネタにしましたね)。

この曲については「典礼音楽としては、あまりに劇的でオペラ的」という批判が、ほぼ決まり文句のようについて回っている。
実際この曲、曲の随所に現れる血管がブチ切れそうな猛烈な高揚感と、対象的な静謐な祈りとの落差の大きさが誠に劇的で、
「オペラ的」どころか「オペラそのもの」じゃないか、と私なんかは思ってしまう。

でも「オペラ的」であるからこそ、この曲は聴き手の心にストレートに訴えかけるのだろう。数々の傑作オペラを書きあげて、
オーケストラと声の効果的な使い方を知り尽くしたこの巨匠にしか出来ないと思わせるこの名作。
マルケヴィッチがこの曲について語った「深く宗教的な作品だけれども、これを書いたのが、外向的で感じた事を遠慮なく表現する南方の人である事は
考慮しなければならない」という言葉は、非常に示唆に富んでいると思う。

この曲は聴衆のみならず、演奏者にも大人気で(それだけ表現意欲をかき立てる作品なのだろう)繰り返し録音している指揮者も多く、名盤も多い。
その中で1枚、と言われたら、昔から定番として親しまれているトスカニーニをやはり推したい。
作曲者の没後50年にあたる1951年1月27日の録音。つまり今からちょうど60年前!の音源だが、全く古臭さを感じさせないのが凄い。
熱気に溢れた演奏は、とても80歳過ぎた老巨匠のものとは信じ難い。全くトスカニーニ、とんでもない爺さんだ。
他にもライナー(DECCA)、マルケヴィッチ(PHILIPS)、バルビローリ(EMI)等もそれぞれがユニークな名演奏と思う。

「オペラ系」の作曲家が残した素晴らしい「レクイエム」をもう1曲ご紹介。それがスッペの作品。
スッペと言えば、専らオペレッタのヒットメーカーとしてのみ記憶されていて、「レクイエム」を作曲している事実すらほとんど知られていない。
実際私も「珍曲好き」ゆえ、この盤を入手したにすぎず、正直言えば曲そのものには全く期待していなかった。

ところが聴いて驚いた。スッペというメジャー作曲家の作品でありながら、全く無視されているのが不可解な程の名曲である。
ヴェルディとはまた違った意味で、この上無く「うた」に溢れたレクイエム。ヴェルディのような「血沸き肉躍る」感は全然無く、
そのクリアな響きはむしろモーツァルトを思わせる(実際に影響を受けているのかもしれない)。
メロディアスで、劇的迫力も充分なこの「隠れ名作」、是非ナマで聴いてみたい逸品だ。

宗教曲の権威、コルボによる演奏がまた素晴らしい。
最後に聴衆の大拍手と歓声が入るので、そこで初めて「ライヴだったのか!」と驚かされるのだが、ライヴでこの完璧無比な名演奏! コルボさん、脱帽です。
多くの方にお薦めしたいこの名盤、誠に残念ながら現在入手困難になってしまっているようだ(中古品もほとんど見かけない)。復活熱望の一枚である。

diskunion新宿classic マリオ・ネコ・マルコ

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