猫丸しりいず第78回

◎猫丸しりいず第78回

ベルリオーズ:交響曲「イタリアのハロルド」

シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 プリムローズ(Va)
(国内RCA BVCC7915)
 
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ指揮
 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 スーク(Va)
(国内SUPRAPHON COCO73186)
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ベルリオーズの不遇の?傑作「イタリアのハロルド」。
曲の出来栄えも演奏効果も、あの「幻想交響曲」に全く引けを取らず、それなりに演奏や録音の数もあるにもかかわらず、
実に「地味な存在」に甘んじている。私はこの曲の方が「幻想」よりも好きな「ハロルド党員」なのだが、
残念ながら自分の他に「ハロルド党」の方に出会った事もなく、ちょっと寂しい思いをしている。
 
それはともかく・・・
この曲に関しては、パガニーニからの依頼により「協奏的作品」として作曲に着手されたが、
超絶技巧の見せ場が無い・・と途中でパガニーニが不満を持って委嘱をキャンセルしてしまい、
結果現在のような形の曲となった、というエピソードがどんな解説書やライナーノーツにも載っており、
基本的にはそれを信ずるべきなのだろう。
しかし、昔から私はこの通説にどうも腑に落ちない点がある。
 
パガニーニと言えば、自分の超絶技巧の「企業秘密」がバレないように、弟子もとらず、
自作の協奏曲の独奏パートも自分にだけわかるような符号で記譜していた・・等々の伝説を持つ
「悪魔的デスメタル系カリスマ」の元祖のような人。
そんな怪人が、自分で演奏するための曲を、「協奏曲」というジャンルに全く実績の無い他の作曲家に依頼したりするだろうか?
 それにも増して、ヴィオラという楽器自体がその地味でくすんだ音色から言っても超絶技巧を誇示するのには向いていない。
どうにもこの話、不自然に思えるのだが果して真相は如何に?
 
作曲の経緯の真相はともかくとして、実際この曲のヴィオラ・ソロは非常に存在感が薄いと私は感じて来たのだが、
その点に関して実に対照的な2枚を今回はご紹介。
まずはミュンシュ。昔から「ハロルド」の決定盤の一つで、私もショーソンの交響曲、ミヨーの「世界の創造」と並ぶ
「ミュンシュ&ボストン響名演BEST3」として愛聴している名盤。まさに豪放磊落なミュンシュの指揮と、
それに応えるボストン響の猛演ぶりが実に痛快なのだが、反面、プリムローズという超大物を起用しながら
独奏ヴィオラは完全に喰われてしまい、ほとんど印象に残らない結果となってしまっている。
 
対して、名手ヨゼフ・スークがヴィオラを弾いた盤。
これは、あの名歌手F・ディースカウが指揮者として登場する珍品で、しばらく入手困難だったが
最近コロムビアの廉価盤で復活したもの。1975年の録音。
この盤、最初に出て来るヴィオラ・ソロが思わず「おおッ」と身を乗り出す程のスバラシサで、「さすがスーク」と唸ってしまう。
自然にこの後のソロ・パートにも耳をそばだてる事となり、「そういえばこの曲のヴィオラ・ソロをこんなに真剣に聴いた事無かった」
と思わせるのだ。F・ディースカウの指揮ぶりは、生真面目と言うか「安全運転」そのもので、特に第1楽章など「せっかくなんだから
もっとアレコレ仕掛けてみてもいいんじゃないの?・・・」と思ってしまう程だが、オケの炸裂にヴィオラ・ソロが吹き飛ばされてしまうような
ミュンシュ盤に比べると、結果的にその「安全運転」ぶりがスークの好演を目立たせているのだから「良し」とすべきであろう。
フランスものに独特の良さを見せる、チェコ・フィルの演奏もなかなか聴きもの。
 
それにしても、そうそう機会の無い「指揮者」としての録音が「ハロルド」だなんて・・・
フィッシャー=ディースカウ大先生。貴方ひょっとして「ハロルド党員」ぢゃ無いですか?
隠さなくってイイんですよ。是非わが「ハロルド党」の名誉総裁にご就任を・・・

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