猫丸しりいず第85回

◎キュイ:歌劇「黒死病時代の饗宴」、3つのスケルツォ 他
 
ヴァレリー・ポリャンスキー指揮 ロシア国立交響楽団
(英CHANDOS CHAN10201)
2047.JPG
「○人組」というようなグループがある場合、それを構成する個々のメンバーそれぞれの人気に差が出てしまう・・・というケースは結構あるようだが、有名な「ロシア五人組」はその極端な例と思える。
 
有名な3人と、他の2人(バラキレフとキュイ)の人気の格差は余りに大きい。それでもバラキレフには2曲の交響曲や「イスラメイ」といったある程度知られる作品があるからまだ良いが、残る1人セザール・キュイ(1835~1918)の曲を聴いた事のある方は果してどの位いらっしゃるのだろうか?
 
ほとんどの音楽ファンにとってキュイという作曲家は、その作品ではなくて、ラフマニノフが「交響曲第1番」を発表した際に、それをボロクソに酷評して作曲者をノイローゼに追い込んだというエピソードによって辛うじて記憶に留まっているだけの存在のような気がする。
キュイの毒舌は悪名高かったようで、まあ「自業自得」という気がしないでもないが、こんな「伝説の悪役レスラー」みたいな記憶のされ方は、さすがに可哀想でもある。
 
フランス人の父とリトアニア人の母との間に生まれたキュイは、実は民族的には「ロシア人」ではない。
当時の多くのロシア作曲家と同様「本職」は軍人で、長寿に恵まれ、多くの作品を遺している。
にもかかわらずなぜこうまでも彼の作品は知られていないのか?
彼の創作の中心は歌劇や歌曲、器楽曲であり、交響曲や交響詩は書いていない。この事は、作品の認知度アップにはかなり不利に働いているように思える。あるいは単に「作品がツマラナイ」からにすぎないのか?
 
「謎の男」キュイに昔から多大な興味があった私。そんな私の前に忽然と現れたのが今回ご紹介の「キュイ作品集」。
迷わずゲット。早速聴いてみると・・・・
最初に入っているプーシキンの原作によるオペラ「黒死病時代の饗宴」。
タイトルからして、さぞかし「魑魅魍魎跋扈系」な「禿山の一夜」的世界が展開するかと思いきや・・・
 
意外や意外。その音楽には「いかにもロシアでござい」的なコッテリ感、土俗的要素はほぼ皆無。
端正と言って良い程に洗練された響きはチャイコフスキーを連想させるが、あるいはチャイコフスキーよりも更に「脂っ気」が抜けているかもしれない。他の収録曲も同様にスッキリした佇まいながらも、その中にしっかり「押し付けがましくないロシアの香り」が感じられるなかなかの名作ばかり。
キュイに対して私が勝手に抱いていた「毒舌の偏屈おやじ」みたいなイメージは完全に打ち砕かれ、「こんな独特の魅力を持った作品を遺しながら、ここまで聴かれていないのは実にもったいない」と思うようになった。
少なくとも、作品がツマラナイから知られていない、という事では無さそうで、単に紹介される機会が少ないからに過ぎないと考えられる。
「聴いてみよう」という人が増えれば、充分再評価される人と思われるのだが・・・・
 
ただ、残念ながらCDで入手可能なキュイの楽曲には非常に限りがある。そんな中で、このシャンドス盤は比較的入手しやすく、演奏も優れているのでおススメだ。こういう珍曲の録音は、ただ単に「音にしました」というレヴェルでは無く、その作品の価値がキチンと伝わるものでなければ意味が薄いが、以前とりあげた「ナボコフ作品集」でも優れた仕事をしていたポリャンスキー、なかなかの凄腕である。ロシア音楽のお好きな方は、
話のタネに是非ご一聴を・・・
 
キュイは、あのシャルル・ぺローの「長靴を履いた猫」をオペラ化しているらしく、「猫丸」たる私としては大いに関心があるのだけれど、
今後録音される事はあるのだろうか。「まさかこの曲が」というような曲目がCD、DVD化される事もある昨今だから、気長に待つと致しましょうか。


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