猫丸しりいず第88回

●猫丸しりいず第88回 
 
◎ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調

 ブルーノ・レオナルド・ゲルバー(P)
 ルドルフ・ケンぺ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
(国内EMI CAPO2014) 

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管弦楽の中で非常に重要なソロを演奏する、というのは奏者にとって嬉しい「晴れ舞台」である反面、
大きなプレッシャーがかかる事でもある。
 
昔、アマオケで打楽器を担当していた友人に「これまで演奏した曲の中で、最も緊張したものは何?」
と質問を投げかけた事がある。すると彼は間髪入れず、こう答えた。
「ヴェルディのレクイエムの大太鼓」。
 
「怒りの日」でのカッコイイ連打が誠に印象的な「ヴェルレク」の大太鼓。
だが、彼曰く「絶叫するオケと合唱に、たった一人で立ち向かわなければならないあのプレッシャーは、
演奏した事のある人にしかわからない」のだそうだ。この大太鼓のパートの重要さは作曲者自身も強調していたようで、
友人によれば「大太鼓の皮は強く張るように」という指示をヴェルディ自身がわざわざ入れているらしい。
幸い本番は滞りなく終了したものの、本番直前には「失敗する夢を何度も見てうなされた」との事。イヤ、こりゃ大変だ。
 
私が一番「苛酷」だなあ、と感じるのは、曲の冒頭の重要なフレーズをたった一人で吹く金管楽器。
例えばマーラーの「5番」や「展覧会の絵」におけるトランペットなど。
私も昔演奏した事があるのでわかるが、金管楽器は吹き始めてすぐには「本調子」にはならない。
楽器が冷えていたりすると最悪だ。それなのに、一番最初に一番大事な部分を持ってくるなんてムゴイ。
そのムゴさの極限と言えるのが、ブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」。
 
ご存じの通り、この名作はホルン・ソロと独奏ピアノの対話で始まる。
ここでホルンがコケてしまうと、その後がどんなに名演であろうが回復不能な程の大きなダメージを受ける超難所だ。
何度かこの曲をナマで聴いたが、本番前の休憩時間中に舞台裏からホルン奏者が幾度もこの曲頭部分を練習しているのが聞こえてきたりすると、思わず「頑張ってね」と声を掛けたくなってしまう。そして本番で無事この部分が終わると、ホルン奏者が皆思わず安堵の表情を一瞬浮かべるのが非常に印象的だ(この曲に続く「ホルンの鬼門第2位」は、コダーイの名作「ガランタ舞曲」の冒頭のホルン・ソロでは・・・ ホルン吹きの皆様、どうでしょうか??)。

 この曲以外にも、ブラームスの曲には「わざわざ演奏しにくいように書いてるんじゃないか」と思われる部分が非常に多い。
半拍ずれたリズムとか、演奏しにくい調性(ロ長調など)の使用とか・・・。
でも演奏者泣かせのそういう特色が、ブラームスらしい魅力を生み出しているのも事実。
ブラームスさん、貴方ホントにへそ曲がりでオタクなオッサンですね。私と同じじゃないですか。
 
さて、今回ご紹介の盤のソリスト、ゲルバーについても一言。
1941年生まれ。同年代のバレンボイム、アルゲリッチと合わせ「アルゼンチン3羽ガラス」と呼びたい巨匠。
この人、私がこれまでに生演奏を聴いた幾多のピアニストの中で、最も印象深い一人だ。
ピアノという楽器は「機械」なので、巨匠が弾こうが猫が鍵盤を踏もうが同じ音が出る・・・筈なのだが、
「弾き手によってここまでピアノの音が変わる」という事実を私に教えてくれた人でもある。
最初にゲルバーの独奏でグリーグのピアノ協奏曲を聴いた時、本当に驚いた。その音の粒立ちの良さ、美しさ! 
変テコな例えだが、まるで炊き立てのご飯の米粒一つ一つがキラキラ輝いているのを見るような思いだった。
一発でこの人のファンになった私は、その後も何度かゲルバーのステージに接したが、その都度期待に違わぬ「ゲルバーの音」を聴かせてくれるのには驚かされた。ピアノを弾けない私には、この謎がどうしてもわからない。
ピアノを弾ける方、どなたかこの謎ときをしていただけないだろうか??

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