猫丸しりいず第89回

 
◎ベートーヴェン:ピアノ協奏曲ニ長調 
 
アマデウス・ウェーバージンケ(P)
クルト・マズア指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(国内ドイツ・シャルプラッテン TKCC15322/旧規格) 
  
◎ベートーヴェン:クラリネット協奏曲(プレトニェフ編) 
  
マイケル・コリンズ(Cl)
ミハイル・プレトニェフ指揮 ロシア・ナショナル管弦楽団
(独DG 457652-2) 
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懲りずに続く「珍協奏曲シリーズ」。
今回のテーマは、有りそうで無いパターン「他の独奏楽器のために編曲された協奏曲」。
 
 協奏曲が特定の独奏楽器を念頭に作曲されている以上、独奏楽器を変更する事は技巧的、音域的に
かなりの無理が生ずる事が避けられない。このパターンの実例が少ないのはそういう理由が大きいのであろう。
その悪条件を承知の上で、果敢にもそれを実践した実例としてベートーヴェンの名作「ヴァイオリン協奏曲」を
元ネタにした2曲を今回はご紹介。
 
1曲目は、意外にも作曲者自身がピアノ用にアレンジした版。
作曲家、教育者として有名なクレメンティのために手がけたものらしい。
ピアノという楽器は音域、調性、技法上の制約が非常に少ないので、他の楽器からのアレンジという点で有利なのは間違いない。しかし・・・・・
 
実際に曲を聴いてみると、基本的に単音楽器であるヴァイオリンをピアノに移す・・というのは、逆の意味でのムリを感ずる。
右手はオリジナルのヴァイオリンの旋律を奏で、左手はそれにちょっと和音や装飾で彩りを添える・・以上の事が出来ないのだ。つまり、協奏曲なのに「ピアノ・ソロの聴かせどころがない!!」という事。
もともと原曲がゆったりした起伏のなだらかな曲だけに、第1楽章を聴いているうちに「こりゃ、ほとんどリチャード・クレーダーマンですよ。ベートーヴェンさん・・・」と呟きたくなるのを禁じえない。
 
でも「聴かせどころ無し状態」が続く事には、ベートーヴェン自身が一番フラストレーションを感じたらしい。
その反動がイッキに出てしまうのが、奇ッ怪な第1楽章のカデンツァ。
とにかく長い。しかも後半にはピアノと一緒に、ティンパニのソロがドンドコドンドコ鳴ったり、当時としては相当にユニーク
かつアバンギャルドな代物と思われる。そして、ピアノの技巧的な聴かせどころをムリヤリこのカデンツァの部分に圧縮したような形になってしまったため、この箇所が前後の部分からムチャクチャに浮いているのだ。
何だか「ここで笑わないと、もう笑う場所無いんですよ」というギャグを連想してしまう。
 
結局このカデンツァの後はまた「クレーダーマン状態」に戻って全曲終了。
耳には心地良く、カデンツァ以外は「違和感」みたいなものは全然無いのだが、あえてこの作品を取り上げようというピアニストが決して多くは無いのが納得出来るというのが正直な聴後感。
ご紹介の盤のピアニスト、ウェーバージンケは教育者としても知られる人で、1967年以降何度も来日しているとの事。
なかなかの名演を聴かせてくれる。
 
お次は何を思ったか、この曲を「クラリネット協奏曲」にしてしまった驚きの版。
可能な限り原曲を崩さずにクラリネットに移行したプレトニェフの工夫と、英国の名手マイケル・コリンズの大健闘には
惜しみない拍手を贈りたい。ただ、やっぱり「ムリヤリ感」は払拭出来ない結果となった。
コリンズの妙技に助けられて、「ギクシャク」した感じはあまり無いものの、ピアノ版と違い「どのようにクラリネットに移行
したか」というテクニカルな部分にばかり関心が向いてしまって、曲そのものを楽しむという感じにならないのだ。
この盤、前半にモーツァルトの有名な協奏曲が入っていて、それに続けてベートーヴェンを聴く形になるので尚更違和感が
目立ってしまうのは皮肉。
第3楽章のロンドは比較的クラリネットに合っていて、最も違和感なく聴ける。
「労多くして・・・」という諺が頭に浮かぶ珍品ではあるが、珍版好きの方には一聴の価値ありと思う。
また管楽器やクラリネットが好きな方、クラリネットを演奏する方には「どうですか?コレ」とご感想を求めたい1枚だ。 
 
しかし「協奏曲」、奥深い世界であります・・・・・・


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