猫丸しりいず第91回

◎ゴットシャルク:交響曲第1番「熱帯の夜」・交響曲第2番「モンテビデオ」他
 
リチャード・ローゼンバーグ指揮 ホットスプリングス・フェスティヴァル交響楽団
(NAXOS 8559320)
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前回の2曲に続き、「夏になると聴きたくなるクラシック」が今回のテーマ。ご登場頂くのは、アメリカの作曲家ルイ・モロー・ゴットシャルク(1829~1869)。
 
 ベートーヴェンの死去した2年後に生まれ、ベルリオーズと同じ年に世を去ったゴットシャルク。我々が通常「アメリカ音楽」と聞いてイメージするのは、基本的にはコープランド、ガーシュウィン等々の20世紀の音楽であって、19世紀のアメリカ音楽、と言われてもイマイチピンと来ないという方がほとんどであろう。でも考えてみるとアメリカ合衆国の独立は1776年で、ベートーヴェンの生年(1770年)と大差無いわけであるから、19世紀には既に国際的に活躍する作曲家が存在しても何の不思議も無い。
 
 ニューオーリンズに生まれ、幼少時から天才と騒がれた彼は、10代前半という若さで渡欧し、技巧的なピアノ曲の演奏でショパンやベルリオーズといった当時の大物からも注目されたが、結局ヨーロッパでは受け入れられないまま帰国。その後ピアノのヴィルトゥオーゾとして名声を勝ちうるも、女性問題でアメリカを去らざるを得なくなり、南米を転々とするうちに40歳で病死・・・という、短くも波乱の多い人生を送った。
 
 まだジャズも誕生していない時代のアメリカの作曲家が一体どんな音楽を創ったのか?と興味津々で聴いてみると、これが実に楽しい曲ばかり。しかも、20世紀のアメリカ音楽と一味違った独特の魅力に満ちている。
 
 この人の作品の魅力を一言で表現するのはなかなか難しい。中南米音楽の影響が強く見られるのは事実だが、後のアメリカや中南米の作曲家たちのその手の作品にありがちな、「第1ボタン外したら、汗がギラギラ光ってました」的な過剰な「熱血」テイストが薄いのである。「熱帯の夜」の後半のカーニバル的盛り上がりの場面でも、非常に湿度が低くカラッと爽やかなのだ。
ニューオーリンズ生まれのゴットシャルクはクレオール(フランス移民がルーツの人種)の血を引いている。ルイ14世からとられた「ルイジアナ」という州名や、「バトンルージュ」「ラファイエット」等々のフランス丸出しの地名からもうかがわれるように、この地域はフランス文化の影響が濃い。だから・・・という訳では無いのかもしれないが、彼の音楽は「新大陸的なオープンな雰囲気」と「ヨーロッパ的な節度」が実に絶妙なバランスを保っていて、それが独特の魅力に繋がっているように私には思われる。
「アメリカの空の下だけど、食べているのはハンバーガーとコカコーラじゃなくて、フランスパンとカフェオレざます」という感じであろうか(実際、曲のあちらこちらにマスネ、トマ、エロルド等を連想させるフランスの薫りも漂っている)。
 
あのリンカーン大統領の前で「御前演奏」までやったというゴットシャルクだが、その波乱&放浪の人生ゆえか、楽譜は未整理、散逸しているモノも多いらしく、このCDに収められている音源は指揮者のローゼンバーグが補筆して演奏可能な形にしたものも含まれる。
しかし、彼の音楽の魅力を味わうに当たり、その事は全くハンデになってはいない。
 
このNAXOS盤、演奏水準が非常に高く(しかも演奏が実に「楽しげ」なのが良い)万人におススメできる1枚。アメリカ音楽ファン以外にほとんど知られていないのが実に惜しいこの人の音楽。大げさな「心の準備」が無くとも自然にスッと入っていける楽しい作品ばかり! 一度お聴きになっては如何?


★緊急予告!!★

「猫丸しりいず」が何と! 本になります!!
9/14(水)発売! 価格840円(税込) 
詳しいご案内は改めて当ブログや店頭にてご案内いたします。
ご期待下さい!!


diskunion新宿classic  芥川賞を狙う猫丸

 

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