猫丸しりいず第93回

 
猫丸しりいず第93回
 
◎R・シュトラウス:楽劇「サロメ」
 
 ジュゼッぺ・シノーポリ指揮 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団 他
(独DG 4318102)
 
 サー・ゲオルク・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 他
(独DECCA 4757528)

 
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「水戸黄門」が遂に終了するらしい。
 
「テレビの黄金時代」の象徴と言えるこの番組、私は西村晃さんが黄門様を演じていた時期がピークだったように思う。「ただの好々爺」に見えた爺さんが黄門様の正体を現した途端に見せるあの眼光の鋭さと、何とも言えない凛々しい気品。悪人どもが「ハハ~ッ!」とひれ伏すのが当然と思える程のあの威厳は、まさに西村さんにしか出せない至芸だった。
また、この時期は主役陣のみならず、悪役、脇役陣の人材が非常に豊富で、私の周りの友人たちには「どんな悪役スターが登場するか」という点にひたすら熱中、コーフンするオタクも多かった。かく言う私もその一人で、たまに登場する山形勲さん扮する柳沢吉保に大チェックを入れていた事を思い出す。
 
 西村晃、山形勲のような「気品ある悪役」の後継者は遂に現れていない(と私は思う)。黄門様の終了は時代劇の(あるいはテレビドラマそのものの?)衰退の結果というだけではなく、脇を固められる渋い俳優の層が非常に薄くなっている事の象徴のようにも思える。
 
 ドラマや演劇や映画は、ひたすら主役だけが輝けば良いというモノでは無い。脇役が充実していないと面白さ、充実感が半減する。それはオペラにも言えるのではないだろうか。その事を最も強く私に感じさせる作品が、この「サロメ」。
 
かなり昔の話だが、ドイツの名指揮者ハンス・ドレヴァンツがNHK響に客演し、「サロメ」を何と演奏会形式でやった事があった。「七つのヴェールの踊り」とか「ヨカナーンの生首」とか、ドギツイ程に「視覚的要素」の大きいこの曲を演奏会形式でやってどうするんだ、と納得の行かぬまま聴きに行ったのだが・・・ 見事な演奏に圧倒された。
ドレヴァンツの指揮も実に良かったのだが、何と言ってもサロメの義父ヘロデを演じたテノール、ホルスト・ヒースターマンがあまりに素晴らしかったのである。
 
ヘロデは兄を殺し、その妃を奪って王位についた人なので、本来もっと「暴虐キャラ」として描かれても良いはずなのに、なぜかこのオペラではサロメやヘロディアスに小馬鹿にされまくる「オペラ界ダメおやじ大賞」を進呈したい位の情けない人物になっている。
中でもサロメが「踊った褒美にヨカナーンの首が欲しい」といった後の狼狽ぶりがあまりに面白すぎ。その日のヒースターマンの歌唱は特にこの部分が素晴らしくて、全く視覚的な「演技」を伴わないのにも関わらず、恥も外聞もかなぐり捨てたようなヘロデの慌てぶりがまるで目の前に見えるようだった。「歌唱による演技」がここまで聴き手の想像力をかき立てるのか・・・と、心底感心してしまった(ご紹介のシノーポリ盤では、そのヒースターマンがヘロデを歌っている)。
 
「脇役好き」の血が騒いだか、それからというもの、「サロメ」を聴く時には主役の二人そっちのけでヘロデにばかり関心が向くようになってしまった。実際、ヘロデが前半をキッチリ盛り上げてくれないと、その後のサロメの狂気と死・・というハイライトの部分が生彩を欠くように思われる。ヘロデ役はホントに「脇」と思われているのか、あまり大物歌手が歌っている例は無いのだが、中でピカイチの抱腹絶倒ヘロデがDECCAのショルティ盤に登場のゲルハルト・シュトルツェ。この人、「指環」のミーメ、「ヴォツェック」の大尉、「カルミナ・ブラーナ」のテノール等、一癖ある役をやらせたら並ぶ者の無い超個性派名歌手(正しい意味で「オンリーワン」と言える人だろう)。もう、主役のサロメ( 演ずるはニルソン!)も喰ってしまうような大怪演ぶり!。「カルミナ」の「焼かれる白鳥の歌」も彼の絶唱(?)で聴いてしまうと他の歌唱が聴けなくなってしまう程の強烈さだが、まさに拍手喝采の名人芸!
 
それ程多くのオペラを聴かない私だが、ヘロデの次に好きな「脇役」は「トゥーランドット」のピン・ポン・パンの3役人。まあ、長くなってしまうので、彼らの登場はまた別の機会に。
イヤ~、「脇役」ってやっぱり面白すぎる・・・
今回はこのへんで・・・・


★「猫丸しりいず」が何と本になって登場! 9/14(水)発売 840円(税込み)
 発売までいよいよあと1ヶ月! ご期待下さい!


diskunion新宿classic  赤塚賞も狙う猫丸

 

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