猫丸しりいず第99回

ハイドン:交響曲第99番
 アンタル・ドラティ指揮 フィルハーモニア・フンガリカ
(独DECCA 452259-2)
 
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今回は第99回。「99」にちなむ名曲と言えば、もうこれしかありません。

「ハイドンの99番」.

思うにハイドンという人、ベートーヴェンとモーツァルトに挟まれて、とても損をしている。
その作品の量と質のとんでもない充実ぶりに比べると、不当とも思える位人気が低いし、「ハイドンの熱心なファン」という方にもあまり出会った事が無い。
 
彼の生涯には「艱難辛苦の末に、偉大な名曲を作った」とか「次元の違う天才だったが夭折」といった一般ウケしやすいストーリーが無い。約30年に亘って音楽通のエステルハージ侯爵の宮廷楽長を務めあげ、在任中からヨーロッパ中で名声を博し、「還暦」でフリーになるとまさに引く手あまたの大人気。最晩年には「天地創造」「四季」の2大傑作を遺し、77年の長寿を全う・・・というその人生は、古今の幾多の作曲家の中でも屈指の安定ぶり。その激動の無い安定した生涯が、ハイドンへの注目度を何となく低くしてしまっているように思えるのは皮肉。
 
私自身も正直言えば、クラシック聴きはじめの頃はハイドンの曲は皆同じように思えて、あまり熱心に聴く気になれなかった。ところが、かなりクラシックを聴き込んでから再度ハイドンの曲に接してみると、自己のスタイルをキッチリキープしながら、それが「金太郎飴」的なワンパターンに陥らず、1曲1曲に実に様々な工夫がこらされている事が徐々にわかってきて、ハイドンの「ド天才」ぶりに驚嘆する事となった。
 
何と言っても凄いのは、限られた編成の宮廷楽団を用いて、音楽好きのエステルハージ侯爵やその客人たちを満足させる作品を作らなければならない・・・という大きな「制約」の中でハイドンが素晴らしい成果をあげた事。まさに究極の「仕事人」である。そういう厳しい環境で鍛え抜かれた仕事人が、晩年に怒濤の勢いで多数の傑作交響曲を生み出したのは、至極当然の事に思える。
 
しかし今日でも盛んに演奏されるハイドンの交響曲と言えば、「驚愕」「軍隊」「時計」「太鼓連打」「ロンドン」の愛称付きの5曲をはじめとした極く一部の曲に限られている感があるのは残念だ。爽やかな第1楽章が実に心地良い「99番」が私は非常に好きなのだが、
この曲も全く地味な存在に甘んじてしまっている。ちなみにこの曲、木管の華やかな響きが印象的だが、実はハイドンが編成にクラリネットを採り入れた最初の交響曲との事。当時まだ「新参者」だったこの楽器をハイドンが自作に用いるキッカケとなったのは、後輩モーツァルトの作品に刺激されたからだそうで、押しも押されぬ大家になって尚、良いと思ったものは積極的に自作に採用するチャレンジ精神は、誠に稀代のアイディアマンのハイドンらしく、思わず「アンタは偉い!」と叫びたくなる程である。「95番」と並び、もっともっと聴かれてほしい傑作である。
 
さて、「99番」の名演盤と言えば、クリップス&ウィーン・フィルのDECCA盤、デイヴィス&アムステルダム・コンセルトヘボウ管のPHILIPS盤等が頭に浮かぶが、ここは歴史的プロジェクトとしての意義に敬意を表し、ドラティ指揮の名演盤をご紹介。
ハイドンの交響曲の録音史において、永遠の金字塔とも言える存在がドラティによる交響曲全集。今でこそ複数の全集が存在するようになったが、レコード時代にこの膨大な全集録音を成し遂げたDECCAのパイオニア精神には全く頭が下がる。演奏しているフィルハーモニア・フンガリカは、1956年の「ハンガリー動乱」の際にドイツに亡命したハンガリーの演奏家たちによって結成されたオケで、このハイドンの他、コダーイの管弦楽曲全集等優れた録音を遺したが、誠に残念ながら財政難に陥って2001年に解散してしまったそうだ。
 (とにかく運営にお金がかかるオーケストラという集団。今でも財政的に厳しい楽団が少なからずあると聞く。)
 
当「猫丸しりいず」も次回は100回目を迎える。次回の主役は第100回を飾るにふさわしい?私の敬愛する怪人指揮者が登場。お楽しみに・・・


diskunion 新宿 classic    虎丸

 

 

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