猫丸しりいず第100回

◎ハイドン:交響曲第100番「軍隊」~第4楽章
◎ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」(1958年録音ステレオ盤)
 
ヘルマン・シェルヘン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団
(国内WESTMINSTER MVCZ10058~59 2枚組/廃盤)
 
◎ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
 
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮 ブレーメン・フィルハーモニー管弦楽団
(独ARCHIPEL ARPCD0150)
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当「猫丸しりいず」も、遂に100回目を迎える事となった。
 
「100回目」だからと言って何ら特別な事が出来るわけでも無いのだが、そういう節目の時に是非とりあげてみたいと思っていた演奏家を今回はテーマにしたい。
それは天下一の怪人指揮者、ヘルマン・シェルヘン(1891~1966)。
 
シェルヘンと言えば、最晩年に遺したあのスイス、ルガーノの放送オケとの「ベートーヴェン交響曲全集」や、猛スピードと傍若無人の大カットで有名な爆笑の怪演「マーラーの5番」が象徴しているように、典型的な爆演&怪演指揮者という強固なイメージがあるように思う。ちなみに私が最初に聴いた彼の録音はハイドンの「軍隊」と、ベートーヴェンの「ウェリントンの勝利」。その後に「マーラー5番」や、「スピード違反」のベートーヴェン8番等々、名だたる珍演ばかりを先に聴いてしまった。それらのあまりの面白さに、私は一発でこの指揮者のファンになった。ただ、シェルヘン先生には申し訳なかったのだが、当初私は云わば「シュールなコミック・バンド」を面白がるようなスタンスで、シェルヘン
の演奏を楽しんでいたにすぎなかった。
 
しかしその後、彼の多くの録音に接するうちに、この人がただの「ヘンテコ指揮者」ではなく、実は非常にしたたか且つアグレッシブな「芸術家魂」を持った凄い人だ、という事が実感されてきた。とにかくこの人、ムチャクチャとさえ言える音楽への情熱と、自分が信ずる音楽表現を貫く、右顧左眄しない「ブレの無い姿勢」が誠に潔い。
 
例えば、この「英雄」を聴いてみよう。CD1枚に「英雄」「田園」が入っているという、通常ありえないカップリングからも想像されるように、非常にテンポが速い。それもただ早いだけでは無く「推進力」が凄まじい。聴いているこちらまでグイグイ引っ張っていかれそう。そして、提示部のリピートをキッチリやり、楽譜の慣習的な改変を排除し、極力楽譜通りに演奏しようとする姿勢。そういうアプローチは、いわゆる「古楽オケ」が隆盛して以降全く珍しいものでは無くなったのだが、既にそれを今から50年以上も前にやってしまっていたシェルヘンの演奏には大時代な感じや古くささが微塵も無い。聴いていてその「疾走感」が実に心地良い快演である。ちなみにこの「英雄」はモノラルの全集とは別の、ス
テレオ再録音盤。この名盤が現在入手困難なのは本当に惜しい。
 
ただ、そうしたこの人の「ブレの無い」姿勢が曲によっては必ずしも100%成功していないのが、また実にシェルヘンらしく微笑ましい。この2枚組セットに第4楽章のみが収録されているハイドンの「軍隊」はその一つの例。常軌を逸した猛スピードと、コーダのヤケクソ気味の打楽器の強奏はまさに抱腹絶倒の面白さだが、このアプローチが「軍隊」から新たな魅力を引き出しているかと言えばちょっと微妙ではある。
 
このシェルヘン先生、ベルリンで居酒屋の息子として生まれ、ほぼ独学で音楽を習得し、若い頃から熱心に現代音楽をとりあげ、戦後は新興レーベルのウェストミンスターに多数のユニークな録音を遺し、はたまた電子音楽スタジオを開設し・・・と、音楽に対する尋常でない情熱と行動力で20世紀の演奏史に大きな足跡を遺した人。この「猫丸」に以前ご登場頂いた「ヤマカズさん」こと山田一雄と双璧の、最良の意味での「音楽バカ」という称号を捧げたい偉大な音楽家だ。音楽好きが昂じて、イイ齢のオッサンになってから音楽業界に転職した私なぞは、変人と思われようが自分の信じた道を突き進むシェルヘンの情熱と心意気には心の底から共感し、あやかりたい・・・と思うのだけど、まだまだ修行が足り
ないな・・と感ずる今日この頃。それにしても今後、シェルヘンみたいなキャラの音楽家は果して現れるのだろうか。
 
シェルヘンと同じく1950年代に大活躍の巨匠にして怪人と言えば、クナッパーツブッシュ。
今回ご紹介のもう1枚、1951年の「ブレーメンの英雄」も、ファンの間で伝説の珍演として名高い音源。これも「百聞は一見(一聴か?)にしかず」の典型例で、とにかく聴いて頂く他は無いのだが、第1楽章冒頭の2回の和音だけで聴き手を「昇天」させてしまうクナさんの濃すぎる芸には唖然とさせられるばかり。シェルヘンの「英雄」のわずか7年前の演奏とは信じ難い程のスタイルの違い。こんな両極端の演奏が平気な顔して共存出来た1950年代って、本当に恐ろしい時代・・・ イヤ、「パラダイス」だったのかも。

ついに100回目を迎えた当「猫丸しりいず」。また次回より初心に帰って頑張ります。今後ともご愛読の程よろしくお願い申し上げます!


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