猫丸しりいず第103回

●猫丸しりいず第103回
 
◎ストラヴィンスキー:ダンバートン・オークス
 フォルトナー:歌劇「血の婚礼」~幕間の音楽 他
(国内BMG/RCA BVCC90/廃盤)
 
◎ブラームス:交響曲第3番(1983年録音盤)
(独EMI/DHM CDC7478722)
 
 ギュンター・ヴァント指揮 北ドイツ放送交響楽団
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 私、生来のヘソ曲がりの上、「マイナー」「脇役」が大好きと来ているので、昔から実力の割に人気の無い地味な指揮者に妙に「萌える」性癖がある。
 
しかしそんな「不人気指揮者」の中で、急にブレイクし「人気指揮者」になってしまった人が3人いる。その3人はドラティ、スクロヴァチェフスキ、ヴァント。自分がひっそりと敬愛していた人が急に日の当たる存在になるのは、嬉しいような寂しいような複雑な心境ではあった。その中で、ギュンター・ヴァント(1912~2002)は生涯最後の10年ちょっとの間だけ「大巨匠」に祀り上げられてしまった特異な例。でもこの名指揮者、いきなり「脱皮」したわけでは無い。
 
ヴァントは私が高校生~大学生だった頃、NHK交響楽団に何度か客演している。その中での1983年の公演が、クラシック好きの友人たちの間で大評判を呼び起こした。実演を聴きに行った友人が「火の鳥」と「ブルックナーの8番」を絶賛し、「この爺さん、とんでもない大指揮者かも知れん」とコーフンした面持ちで語っていた事を思い出す。私は残念ながらテレビで見ただけであったが、虚飾を排した辛口な名演に感銘を受けた(特に「火の鳥」)。この時の公演が何の話題にもならなかった事は、今考えると信じ難い。
 
彼はその後1986年にもN響への客演が予定されていて(ただ、この時も全く話題にはなっていなかったが)、なんとベートーヴェンの「第9」を振る事になっていた。前回の公演の記憶がまだ鮮明だっただけに「いよいよ生ヴァントが聴ける」と私は楽しみにしていた。しかし、2つのプログラムで「第9」を連続4日間演奏・・・というスケジュールに悪い予感はしていたのだが、結局リハーサルの日程等々で折り合いがつかなかったらしく、ヴァントの客演は中止となってしまい、私は「生ヴァント」を聴く機会を永遠に失ってしまった。
 
そんな個人的な思い出もあり、私はどうしても1980年代のヴァントの演奏に強い愛着がある。中でもブラームスの「3番」。ブレイク後の再録音よりも、私は断然この旧録音が好きだ。この演奏、とにかく「辛口」で、第2、第3楽章はこれ以上素っ気無くは出来ないんじゃないかと思える位だが、そんな中から自然に滲み出て来るロマンティックな味わいの素晴らしさ!「男は決して涙を見せちゃいけないんだ。でも本当は悲しいんだぜ・・・」みたいなセリフが似合うぞ、多分。そして圧巻の終楽章。展開部を中心にホルンやトロンボーンを驚くほどに強奏させ、凄まじいド迫力を見せるのだが、その金管が決してうるさくならずに弦としっかり溶け合っているのは見事としか言いようが無い。そして、その激烈な展開
部~再現部と、「嵐の過ぎ去った後に、きれいな虹がかかりました」という感じのあの美しい終結部のコントラストが本当に感動的。先日久しぶりに聴き直して、ますますこの演奏に私は惚れこんでしまった。
 
ヴァントは近現代の音楽も非常に得意にしていながら、遺された音源がとても少ないのは残念。今回ご紹介のもう1点はその意味で実に貴重な20世紀音楽集(1984~5年録音)。標記の曲の他、ウェーベルンとマルタンの曲が収録され、何か脈絡の無い選曲だが、恐らくこれはヴァント自身が「ぜひこれらの曲を」とリクエストした結果なのではないかと想像する。「定規と分度器でキッチリ描いた図面」という感じのヴァントの音楽づくりがまさにピタリとハマった名演ばかりで、中でも「ダンバートン・オークス」や、マルタンの「小協奏交響曲」は決定版と言う他ない素晴らしさだ。現在入手困難なこの名盤、復活熱望である。
 
最晩年の演奏ばかりが異常な程にクローズアップされるこの巨匠。でもこの人、それだけじゃありませんよ。それにしても、やっぱり聴いてみたかった「生ヴァント」・・・・・・

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