猫丸しりいず第106回

◎ドヴォルザーク:交響曲第8番
 コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(米EMI 5682292/廃盤)
 
◎ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
 コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 フランス国立放送管弦楽団
(米SPECTRUM SOUND CDSM013JT/EMI音源からの復刻盤)

 
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  大人になってからわかる事なのだが、中高生の時に接した国語や音楽等の「芸術系」の教科書や教材は、なかなか侮れない。
 
 例えば私が高校の授業で使った現代国語の教科書には、坂口安吾、安部公房、埴谷雄高、今西錦司といった面々の文章が載っていた。分かる方には分かって頂けると思うが、相当な曲者揃いである(「怪演指揮者」ばかり並んでいるようなものだ)。当時は彼らの文学・科学界でのポジショニングなど全く知らずに、そのユニークな文章に接していたのだが、今思えば「こりゃ完全に編集者の趣味だなあ」とニヤリとさせられる。でも、何らの先入観も無しに彼らの文章に触れる事が出来たのは、自分には大きな収穫となった。
中でも坂口安吾の豪放な文章は、同級の本好きの連中に一大ウェーブを巻き起こし、
図書室の司書の先生にリクエストをして「堕落論」「信長」「桜の森の満開の下」などの主要作を入れてもらって、皆で読んだ記憶が残っている。
 
音楽の授業の「鑑賞」の教材と言えば、中学生の時に「禿山の一夜」を聴いた時の記憶が鮮烈だ。当時私は自宅にあったサージェント指揮ロンドン響の端正な名演で「禿山」に親しんでいた。ところが、授業で聴いたレコードの演奏は、「カーブでもスピード落としません」と言わんばかりの猛突進ぶりを見せる、実にお下劣ながら魅力的・・・という怪演。「同じ曲なのに、こんなに違う演奏があったなんて」と感激した私は、早速授業の終了後、音楽のT先生(「猫丸」2度目のご登場)に「先生、今の禿山、誰の演奏?」と聞きにいった。すると、音楽室の奥から東芝の教材用レコードを持って来たT先生からの回答は、「ウ~ン・・。 シル・・ベス・・トリ?。あんまり聞かない指揮者ねえ・・」
 
先生のたどたどしい発音と共に、「シルヴェストリ」という指揮者の名は私の脳味噌に深く刻まれる事となり、これがこの怪人指揮者と私との出会いとなった。
 
彼は1969年に亡くなっているので、最初私はこの人をかなり昔の指揮者とカン違いしたのだが、実際には彼は1913年の生まれで、ヴァント、ラインスドルフ、ザンデルリンク、ショルティといった指揮者たちと同世代。50歳代半ばという、指揮者としていよいよこれから・・という時に亡くなってしまった事が惜しまれる鬼才である。非常にアクの強い表現をする人で、好き嫌いがハッキリ別れてしまうタイプの演奏家ではあるが、その強烈な個性には抗しがたい魅力がある。
 
この人の代表的怪演&名演として根強い人気を保っているのが1957年録音の「新世界」。度肝を抜くテンポ設定、濃厚な表現、オケの妙に軽い音色とテキトーなアンサンブル・・等々、この上なく「バランス」が悪く、もう破綻寸前という感じのムチャクチャな演奏なのにも関わらず、そのムチャクチャ加減が(破綻してしまうギリギリ寸前のところで)逆にドラマ性を際立たせている・・・という何とも凄い「新世界」だ。クーべリック&ベルリン・フィルやコンドラシン&ウィーン・フィル等の凛々しい正統派名演と全く違う魅力を放ち、「ああ、新世界ってラプソディだったんだ・・・」としみじみ思わせる異形の名演盤である。ちなみに今回ご紹介の盤は、フランス・パテの最初期盤LP(ASDF151)から復刻した、
最近流行りの「板起こし盤」。今後もこの手のステレオ初期の名盤の復刻は続々現れると思われるが、非常に「勢い」のある音で魅力的。ミルシテインとスタインバーグの共演による、ドヴォルザークの「ヴァイオリン協奏曲」(キャピトル音源)という、これまたマニア狂喜の音源とのカップリングになっている点も誠にポイント高い。
 
「新世界」ほどではないが、この人の「第8番」もなかなか凄い。極端なメリハリ、速い部分での突進ぶりが実にシルヴェストリらしい。この盤は以前「猫丸」でもとりあげたロジンスキーの盤と同じEMIの「アーティスト・プロフィール」という2枚組のシリーズの一環として出たもので、他にエルガーの「南国にて」とかチャイコフスキーの「交響曲第5番」などの怪演も含まれた秀逸なアルバムだったのだが、残念ながら今や廃番で入手困難。このシリーズからは、他にもクレツキやクルツ、マタチッチ等々のマニア垂涎の音源も色々出ていたのだが・・・。
 
それにしても、なぜ私は昔から「個性派」にばかりブチ当たる運命にあったのか。まあ、「類は友を呼ぶ」という事なんでしょうね・・・・

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