猫丸しりいず第111回

●猫丸しりいず第111回

右)フンパーディンク:「青い鳥」前奏曲、星の踊り
 
カール・アントン・リッケンバッハー指揮 バンベルク交響楽団
(海外VIRGINCLASSICS 6285842)
 
◎フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」(抜粋)
 
左)ハインツ・ワルベルク指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 他
(海外EMI 9069362)

 

「幸せ」とは一体何なのであろうか。
 
中学生の頃だったか、この事が急に気になり、早速辞書をひいてみた。すると、「幸せ」の項には「幸福・幸運」とある。ナルホドね、と今度は「幸福」をひいてみると、そこには「しあわせ」と出ているではないか。なんぢゃコリャ、これって説明じゃなくて、ただの「言い換え」じゃないかと一瞬呆れてしまったものの、フト「そうか、こういう状態こそが幸せだ、と客観的に説明出来るような『幸せ』というものは、どうも存在しないらしい」と私は気付いた。
 
その時頭に浮かんだのは、小学校に入りたての頃、担任のH先生が1年3組の良い子たちに読んで下さった「青い鳥」のお話の事。チルチルミチルの兄妹が夢の中で幸せの青い鳥を探しに行くが、どうしても捕まえられない。でも、目覚めてみたら、何と青い鳥は自宅の鳥籠の中におりましたとさ、というあのお話である。その時先生は最後にこうおっしゃった。「皆さん。幸せは皆さんの身近な所にあるのですよ」。しかし当時まだ人間を6年間しかやっていなかった私には、その「身近」というのがどうにもピンと来ず、「地理的に近いところ」程度のイメージしか浮かばなかった。「そうか、幸せってインドの山奥とかに探しに行くもんじゃなく、東中野や落合あたりで地道に探すものらしい」と真剣に考え、野
方行きの関東バスに乗って「ご近所で幸せ探しツアー」まで挙行したのだから、まったく大バカ者である。
 
それからかれこれ40年。様々な人生経験を経て、私にはようやく「青い鳥」でメーテルリンクが言いたかった事がわかってきたような気がする。それは、「幸せは外に探しに行くものでは無い。幸せというものは一人ひとりの内面に存在するんですよ。」という事。無論これは私の「思い込み」に過ぎないのかも知れない。でも、チルチルとミチルが様々な「国」で捕まえた「青い鳥」が、その「国」の「外」に出てしまうと皆ダメになってしまう・・・というストーリーは、「外的な要因で得た『幸せな気分』なんて、ちょっとした事で雲散霧消してしまうのさ」という事を示唆しているように思えてならない。高度経済成長やバブルの時代を生きて、その間色んな浮沈を目の当たりにして来た自分には、「結局、
当たり前と思えるような普通の生活をキチンと続けていける事が何よりも幸せなんだ」と感じられるようになった。昨年の大震災で、そういう思いを持った方も多くおられるのではないだろうか。
 
今年2012年が平凡であっても「幸せ」と思える1年であってほしい、と切実に思う。
 
クラシック音楽の世界で メーテルリンク(1862~1949)の作品を素材にした楽曲と言えば、
ドビュッシー、フォーレ、シベリウス、シェーンベルクといった大物たちが手掛けた「ペレアスとメリザンド」 が圧倒的な存在感を誇っており、有名なお話なのにもかかわらず「青い鳥」を素材としたものは稀少である。その数少ない作り手が、意外にもあの「キング・オブ・一発屋」フンパーディンク。
 
ご紹介のリッケンバッハー盤は実に貴重(しかも廉価)な「フンパーディンク管弦楽作品集」。お馴染みの「ヘンゼルとグレーテル序曲」に始まり、「王の子供たち」「いばら姫」等の珍曲が並んでいるが、この中に「青い鳥」からの2曲が含まれている。「クリスマスの夢」という副題が付いた「前奏曲」は、「ヘンゼルとグレーテル」に通じた雰囲気を持った美しい佳品で、そうか、この2作は両方とも「クリスマスモノ」だったんだな、と改めて認識させる。続く「星の踊り」も中々カワイイ作品。ただ残念ながら私の知る限り、この「青い鳥」の全曲録音はまだ存在しない模様。「いばら姫」の全曲盤を出しているCPO当たりに期待するしか無いか。その他の曲も、ワーグナーから影響を受けた作曲家らしい充
実した響きの作品で、一聴の価値は大いにある。
 
今回のもう1枚は、NHK響への度々の客演で日本のファンにも馴染み深い名匠ワルベルク(1923~2004)指揮による「ヘンゼルとグレーテル」の抜粋盤。私はワルベルクの大ファンなので迷わず入手したアイテムだが、聴いてビックリの珍盤であった。この録音、ヘンゼル、グレーテル、妖精の役を少年少女の歌手が歌っているという「無さそうで有る」珍音源なのだ。無論大人の歌手のような安定感には欠けるが、これはこれで中々イケる。しかも父親役にプライ、魔女役にモーザーという大物がさりげなく出演している上、このエッダ・モーザー演ずる魔女が、以前この「猫丸」でとりあげたヘンゲン(クリュイタンス盤)に拮抗する大怪演ぶりで、大いに満足出来る(笑)。大歌手たちをここまでハッスルさせるこの
「魔女」の役、案外演じてて楽しい役なのかも・・・。ワルベルクの暖かい指揮も期待通りの素晴らしさ。「for kids」というシリーズの超廉価盤だが、「子供用」にとどめるにはあまりに惜しい掘り出し物!。

※本年2012年も当「猫丸しりいず」を引き続きよろしくお願いします!


猫丸スーパーラッキー (時短100回転)

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