猫丸しりいず第113回

●猫丸しりいず第113回
 
◎ペッテション=ベリエル:フレセの花々
小川典子(P)(BIS CD925)
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日本のクラシック・ファンは北欧の音楽が好き・・・という印象をお持ちの方は多いのではないか。ただ、実態をよく見てみると、その「人気」はフィンランドのシベリウス、ノルウェーのグリーグという2人の大横綱に支えられているという感が強く、この2人以外の人気はデンマークのカール・ニールセンがまあ「関脇クラス」と言える他はほとんど「十両以下」なのが実情である。
 
実はまさに多士済々と言える優れた人材が溢れる北欧の作曲家たち。彼らの音楽をもっと聴いて頂きたい!という事で、今回はスウェーデン代表選手としてウィルヘルム・ペッテション=ベリエル(1867~1942)にご登場願う。
 
スウェーデンの作曲家と言えば、18世紀に活躍し「スウェーデンのモーツァルト」の異名を持つクラウスが最近注目を集めており、近現代ではベルワルド、アルヴェーン、アッテルベリ、ステンハンマル、ルーセンベリ・・・と名前を並べるだけでワクワクするようなメンツが並ぶのだが、そんな中でも際立って個性的且つ優れた作品を多数遺したのが彼。R.シュトラウスと同世代で、熱烈なワーグナー信奉者であったらしいが、実際に彼の遺した曲の5曲の交響曲等を聴いてみると、それほどワーグナー的な「くどさ」は感じられず、ダイナミックでありながら後味爽やかという印象。そして彼の作品の中でどうしてもとりあげなければならないのが、ピアノ曲「フレセの花々」である。
 
北欧の地名、人名等は正確なカタカナ表記が極めて困難らしく(基本的には外国語のカタカナ表記には多少なりともムリが伴うもの)、この曲も「フレースエーの花」「フロソの花々」等々様々な表記がされているが、「フレセ」とは作曲者の愛したスウェーデンの島の名前との事。古今のピアノ曲の中でも屈指の名作と疑わないこの曲が、少数の北欧音楽ファンにしか知られていないのは誠に惜しい。
 
どことなくグリーグの「抒情小曲集」を連想させる小品集で、全編にわたって暖かく、清々しい心地良さに満ちたこの作品、寒風吹きすさぶ戸外から暖かい部屋の中に入った時のような「ホッとする気分」を感じさせてくれる。楽しくウキウキしている時よりも、むしろ何か辛い事があって気分が塞ぎこんでいる時に聴くと、実に心に沁みてくる名作だ。ぺッテション=ベリエルという作曲家は、毒舌の批評家として同世代の作曲家たちから煙たがられた存在でもあったそうだが、そういうキャラの人がこんな心優しく美しい曲を遺している・・という点は、以前この「猫丸」でとりあげた作曲家キュイに共通する部分があって面白い。
 
この曲の代表盤と言えば、文句無しにBISの小川典子盤。いかに自社の看板ピアニストとは言え、この曲の本家本元のスウェーデンのレーベルが、北欧の人でなく日本人のピアニストにこの曲の録音を託した事は、如何にBISが小川典子を買っているかの証明であろう。技巧的には非常に易しい(と想像される)曲だけに、弾き手の「センス」と「歌心」が試される作品だが、小川典子の演奏はなかなか素晴らしく、この名作を堪能させてくれる。ことの他寒さが身に沁みるこの冬、暖かい室内で、この「隠れ名曲」を聴いて頂ければ心もきっと暖かくなりますよ。

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